ネイティブ教員と田中校長が連射的に英語で質問を問い掛けると、その都度全生徒の手が挙がり自身の考えを英語で表現する。終始ハイテンションのまま、授業時間はあっという間に過ぎていく

田中淳子(たなか・じゅんこ)
栄東中学・高等学校校長

栄東中学・高等学校校長、学校法人佐藤栄(さとえ)学園理事長。京都生まれ。大学卒業後、通訳として世界銀行に勤務。欧州各国、米国などに赴任。帰国してから公立校で英語科教員に転じ、埼玉県の教員を定年退職後、学園創設者で栄東の初代校長も務めた佐藤栄太郎元理事長(2008年没)にスカウトされて栄東中学校教頭に。2008年12月栄東中学・高等学校校長に就任。2021年4月より第4代理事長も兼務。

英語は中1最初の半年が肝心

[聞き手] 森上展安・森上教育研究所代表
1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――(授業〈上の写真〉の様子を見て)それにしても熱気あふれる授業でしたね。

田中 やはり、アクティブ・ラーニングが本校の大きな柱の一つとなっていることに間違いはないと思います。ただし、アクティブ・ラーニングの授業だけで学力がつくわけではありません。基礎となる学力・知識、あるいは技能を土台として、今後生徒に必要とされる思考力、判断力、表現力などを培っていくような授業の展開を心がけています。

――なんとなく、漫才の掛け合いみたいな雰囲気もありましたね(笑)。

田中 ディベートをするときも、例えば、わざと「田中淳子の授業は好きか嫌いか」というトピックを与え、好きにしろ嫌いにしろ、主張の後に必ずその理由を述べさせます。すると、想定外の答えが返ってきます。公式通りの決まった答えはありません。初めに一つの題材を生徒に与えると、多種多様なアイデアが生まれてきます。かくあるべきというものはない。東大の入試問題にしても、答えは一つでないものも多く出題されますから。

――生徒はみんな英語でよくしゃべりますね。

田中 英語の力をつけるには、中1前半の4月から11月までが勝負です。その間に英語のスピーキングは教科書の題材に沿って徹底的にやります。授業は常に私たち教員と生徒たちとの真剣勝負です。最初は緊張してなかなかうまくいかなくても、子どもたちは順応性が高いので次第に授業のスピードにも慣れ、英語で話せるようになってきます。 

 しかし、栄東の英語の授業ではただ単に英会話を教えているわけではありません。最初は徹底してフォニックス、同時に文法・文型事項を意識させ、書く力をつけていきます。聞く力や書く力がなければ、話すことはできませんよね。そのため、単語のみではなく英語のフレーズで覚えさせます。そこを徹底してやると、あとは単語を入れ替えるだけで正しい英語の文章を作ることができるようになります。

 例えば、基本的な英単語の“like”一つとっても、動詞はもちろん、前置詞、名詞、接続詞など用法はさまざまあるので、それぞれのフレーズのパターンプラクティスを何度も行います。このようなトレーニングを中学1年生のうちは繰り返し続けています。