「東洋大学グローバルコース」開始の背景
山本校長が40年間勤務した前任の帝塚山学院中学校高等学校(大阪市住吉区)が07年に導入した「関学コース」は、包括的な高大連携により、付属校でも系属校でもない高校から80人(のちに120人)までの生徒を内部進学と同様に関西学院大に受け入れるという画期的な仕組みだった。特段の費用もかからず高校にも大学側にもメリットがあるため、これに倣う例が相次ぐことになる。
山本 前任校にはブランド女子大・短大が系列にあり、多くの生徒が系列大に進学する学校でした。ところが、私が教頭・校長を務める間に、生徒の進学先が多様化しました。
当時、現場では進路保証がままならず、中学からの入学者数が年々減っていくような状況が続きました。
――かなり悲壮感が漂いますね。
山本 一般選抜で大学進学実績を上げるにしても、中高一貫校では結果が出るのが6年後になります。そこで、いろいろ考えた結果が、大学との包括的な教育連携でした。原則として全員が進学対象となるものです。それまでは付属校か系列校に限られていた内部推薦入学の門戸が、他校にも開かれたのです。
――それが冒頭のお話にあった「東洋大学グローバルコース」につながるわけですね。
山本 こうした学校間教育連携は、生徒・保護者、中高だけにメリットがあるものではないということを、後に知ることになりました。
――少子化が進むことを考えると、大学もということでしょうか。
山本 そうです。締結から1年半ほどたって、大学にとってもメリットが大きい話なのだと伺って「なるほど」と思ったことが、東京での交渉に役立ったと思っています。
――付属校でも系属校でもないのに、内部推薦に準じた多くの推薦枠がもらえる高大連携のコース方式は画期的なもので、発明といってもいいかと思います。付属校を新設するには土地の手当てから始めないといけません。その点、この方式は、大学サイドから見ると募集活動や投資面でも負担なく実現できるのが素晴らしい。
山本 ただ、これを維持していくのは結構大変でした。ほとんど前例のない形式でしたので、いろいろ大学と協議を続けながら進めていったことを記憶しています。