「他流試合」と模擬国連会議
――東大ともなると、子どもたちの「挑戦」もだいぶ高いところを目指すことになります。合格実績が伸びたのも、先輩の背中を見ながら、というところがあったのでしょうね。
宮阪 それはとても大きいと思います。
先日、一人の高1生が、あるコンテストで優秀な成績を収めたと報告に来ました。「あなたにとって一番大きな学びは何だった?」と聞きましたら、「いろいろなことを考えるためには、知識を得ることが大切だと気付きました。失敗を恐れずに挑戦をしてみることが大事だということも」と言った後に、「今回、挑戦しようと思ったきっかけは○○先輩だった」と言うのです。講演会などで卒業生が語ると、生徒はその後を継いでいこう、自分も挑戦してみよう、という気持ちになるようです。
――積極的に外部のイベントなどに参加していくのですね。
宮阪 本校では「他流試合」と呼んでいます。たいていのものは「参加しておいで」と、国内外問わず送り出しています。やりたいことを自由にやることができる環境かなと思います。
例えば、2017年にオランダのハーグで開催された国際哲学オリンピックに、日本代表として出場した生徒がいました。
――そのオリンピックは知りませんでした(笑)。オランダは、哲学とか好きですよね。
宮阪 世界中の高校生が参加する、いろいろなオリンピックの一つです。フランスのバカロレアと同じように、4時間かけて1題、エッセイを仕上げます。その時は「寛容の精神」について書いたのだそうです。
「大変だったのじゃない?」と聞きましたら、「うちのネイティブの先生の授業の方が、もっと厳しくて考えさせられるから、書くことはいくらでもあった。4時間でも時間が足りないくらいでした」と。その生徒はリベラルアーツのデポー大学に進学しました。
実は、今年も高2生が日本代表として、ポルトガルのリスボンで行われた世界大会に出場しました。
――先輩がこうした道をつけていったことは大きいと思いますね。ところで、いくつかある模擬国連にも参加されていますね。
宮阪 コロナ禍で、ここ2年はほとんどがオンラインで開催されましたが、先日ボストンで開催されたハーバード模擬国連には2人が参加しました。
――アメリカの大学のスケールの大きさを見ると、生徒も変わりますでしょう。
宮阪 そうなんです。現地にいる卒業生が学校を案内してくれたりしますが、先輩が行っているから自分も挑戦したい、と思うようです。
――模擬国連に参加したのは、いつ頃からですか。
宮阪 20年以上前、UNIS-UN(国連国際高校)が主催する世界各国から高校生の代表を集めてさまざまな問題を話し合う会議に、本校の生徒が日本の代表として招待されたことがきっかけとなり、その後、ニューヨーク国連本部で開催される模擬国連に参加させていただくようになりました。多い年には、年に8回生徒を送り出しました。
洗足学園の生徒が主催する模擬国連(JMMUN)も、2013年以降、毎年開催しています。コロナ禍ではZoomなどを利用して行っていましたが、「2022年は、Zoomと対面の併用で11カ国から300人を超える高校生が参加してくれました」と生徒が嬉しそうに報告に来ました。