魚を愛する生徒たちが、試行錯誤で開発にこぎ着けた「ENERFISH」

「奉仕」の精神で役に立つことを考える

――他にもいろいろありそうですね。

宮阪 6年ほど前から、探究にも力を入れるようになりました。中3で研究論文を作成するというのは以前から行っていましたが、2年前から高2でも研究論文の執筆を行うことを始めました。中3では自分の好きなテーマで研究をしますが、高2では、「社会との結び付き」を意識した研究を行います。その成果を発表するため、1日使って講堂での発表とポスターセッションを行います。これには下級生も参加します。

 ところで、「ENERFISH(エネルフィッシュ)」ってご存じですか?

――初めて聞きました。それは何ですか。

宮阪 「私たちは魚が大好き」という高1生4人が、魚がプラスチックを誤飲して死んでしまう問題に取り組みました。

 魚が嫌がる苦い物質をプラスチックに混ぜ込むことで、誤って口にしても吐き出すのではないかという仮説を立て、苦み物質としてデナトニウムを探し出しました。大学に研究の協力依頼をし、ついにデナトニウムをビニールに混ぜ込むことに成功し、ビニール制作を行っている企業に協力していただき、商品開発を試みました。その結果、完成したのが「ENERFISH」です。大好きな魚を救いたい、という思いからスタートした点がかわいいなと思いました。

――大学の研究者や企業と連絡を取るというのは、なかなかすごいことですね。

宮阪 人々のためになるビジネスプランを考えるという「高校生ビジネスプラングランプリ」に応募したことがきっかけでした。準グランプリをいただき、大変喜んでいました。

――まさに学びを自分で形にしたわけですね。

宮阪 これも先輩の活躍を見て、「自分たちも」と応募したということです。そのビジネスプランも、ユニークでした。「世の中のいらないものをなくすことで貢献する」というプランを思いつき、自分たちが本当に嫌いなものは何かと考えた時に、G(ゴキブリ)が思い当たったということです。

 しかし、調べれば調べるほどGはとても清潔で害がないことが分かり、さらには翅(はね)に含まれるキトサンという物質を利用することで、薬を使わない防腐剤ができるというところにたどり着きました。そこで、学校の実験室で実験を重ね、日本キチン・キトサン学会の方にもおいでいただき、抽出に成功しました。

――そんな学会もあるのですね(笑)。

宮阪 実際にミカン農園で、抽出したキトサンを木酢液に溶かした抗菌・防カビ剤を使用したところ、抜群の効力を発揮しました。「ゴキンキラー」と命名していました。とても評価していただき、審査員特別賞を受賞しました。この報告を聞いた後輩たちが、「先輩があんなすごいことを考えたのだから」ということで、次の年に挑戦した結果が「ENERFISH」を開発する活動に結び付いたというわけです。

Gをヒーローと呼んで研究した成果をビジネスグランプリで発表(上) 「ゴキンキラー」を塗布したミカン(下左)としていないもの(下右)では、カビの生え方がまるで異なる 写真提供:洗足学園中学校・高等学校
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