IBでは、重要概念と関連概念を組み合わせながら、さまざまな事象についての学びを深めていく(左)。その思考は、「探究と分析」「アイデアの発展」「課題解決」「評価」というPDCAのように回っていく(右)
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“概念”を常に意識するIBの学び

――理科実験の設備にしても、プロの研究者が使うようなものを使用していますね。

坂井 これはSSH(スーパーサイエンスハイスクール)のおかげで、いただいた資金で電気炉や大きなエバポレーター(蒸留装置)など、いろいろ購入することができました。

――いろいろ外部の機関とも提携されているのでしょうね。

坂井 1年生ですと毎年、富士ワークキャンプを実施して、さまざまな視点で麓から富士山を眺めています。昨年度からは協定を結んで、住友林業の富士山「まなびの森」で、NPO法人ホールアース研究所の指導のもと、自然観察・調査プログラムが始まりました。

 東京外国語大学とも協定を結んで、FLS(母語伸張プログラム)の講師をお願いするときにもご協力いただいています。

――東京学芸大学とはいかがでしょう。

坂井 学芸大とは、SSHの夏休みの講習「SSIB講座」の先生をお願いしていますし、「ISSチャレンジ」や大学で開催されるSSH・SGH・WWL合同発表会の時にも、審査員や推進役としてご協力いただいています。

――私は、数学のオリジナル教科書が素晴らしいと思いました。

坂井 例えば、垂直二等分線の作図の学習の際に、「救える命を増やそう」というテーマを設定して、AED(自動体外式除細動器)をできるだけ等間隔に網目状に配置するにはどうしたらいいかについて授業を行いました。

 昨年の実践で言うと、箱根登山鉄道の勾配のすごさを、実際にイチョウの木のある駐車場のところで再現しようと。教室で三角比を使ってまず計算しておいて、それを実際に2両編成の車両の高さの違いを生徒が目で見て分かるというものでした。三角比をただ計算するのではなくて、現実の社会で起きている現象について、不思議だと思うようなことが教科書に取り上げられています。

――こんなにも生徒が数学を面白く学んでいる学校は珍しいなと思いました。

坂井 これも教科書に書いてありますが、スカイツリーと東京タワーが同じ高さに見える場所を探すといったテーマも生徒たちは面白がっています。授業の難しさはありますが、扱っている対象は身近なもので、それで理解できるという楽しさはあります。生徒は数学が大好きみたいです。

――最近の数学の授業で取り上げた身近なテーマにはどんなものがありますか。

坂井 コロナの時に人との交流を“8割カット”ということで、自宅に居た方がいいと言われたが、それは本当に正しかったのか。6年生になると、パソコンを使って計算しながら、議論していました。コロナも教材になったわけです。

1クラス20人以下と定められているDP(ディプロマ)コースは、E棟の2つの教室で実施。廊下も含め、教室内外の至る所に思考の痕跡が残され、生徒同士の学び合いにつなげられていく
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