2015年に入学した女子中等部2期生。21年の東大・京大をはじめとする難関大合格実績に大いに貢献している 写真提供:西大和学園中学校・高等学校

飯田光政(いいだ・みつまさ)
西大和学園中学校・高等学校校長


1974年神奈川生まれ。大阪教育大学卒業後、理科教員(生物)として西大和学園に。理科主任、学年部長を歴任し、2020年度には渉外室で生徒募集部長、21年度教頭、22年4月から現職。

 

優秀な女子が学園に与えたインパクト

――前回は、西大和学園躍進のきっかけなどを伺いました。今回は、なぜそれが実現できたのか、背景にある“秘密”を教えてください。

飯田 いまから10年ほど前、大きな改革を立て続けに行い、この10年ほどですっかり定着しました。これが東大の合格者増にかじを切る時期と重なっていたわけです。

 一つ目が、2014年から女子中等部を設置して、中学も共学化したこと。二つ目が、同じ学園グループの大和大学(大阪・吹田市)を開学したことです。三つ目は、中等部と高等部を完全に分け、それぞれに学年部長を置き、進学先の目標を明確にしようと、高等部に「東大・京大・国公医コース」を設置したこと。四つ目は、前述の寮生募集のための入試を全国各地で始めたことです。

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――大きな改革が四つもあったのですね。まずは、前回も少し触れた中学校の共学化から伺いましょう。

飯田 中高一貫の中等部は、1988年の開校以来、ずっと男子校でした。男子校として、東大寺学園さんや灘さんを目標にしています。いまでも、東大寺さんや灘さんなど男子難関校の併願校の位置付けですが、少しずつ本校を第一志望として入学してくれる受験生が増えてきました。

 女子中等部を設けることで、これまでは兵庫の神戸女学院さんや大阪の四天王寺さん、京都の洛南さんに進学していたような女子を、初年度は37人迎え入れることができました。もちろん優秀な男子もたくさんいるのですが、入学時点での成績上位者50人を見ると、そのうち女子が40人を占めることもあるほどです。

――圧倒的ですね。関西で一番賢い女子受験生が集まるようになった!

飯田 クラブ活動や学校行事、課外活動など授業以外は男女一緒に行いますが、中学のクラスでは男女を分けています。これまでは中2まで別クラスでしたが、現在では中3まで男女別クラスにしました。男子に引っ張られて成績が下降気味という女子も見られたので。

――授業の編成上、その方がいいという判断でしたか。

飯田 そうです。そのへんを転げ回って走り回って遊んでいるような男子を、女子は冷ややかに見ています(笑)。中学生の段階では女子の方が精神年齢も高く、勉強のスタイルも異なります。女子は中学のうちからコツコツと勉強し伸びる生徒が多いようです。逆に男子は、好きなことを精一杯楽しみ、ここぞというときに本領を発揮するのがスタイルです。

 今年度から中3までを男女別クラスにしたのは、そんな生徒の様子や大学入試結果、いままでの経験から判断した結果です。常にスピード感を持って変革しています。

――高校に進んでからは、開校時から共学だった高等部同様、中学からのクラスも共学化するわけですね。

飯田 クラスとしてはそうですね。でも実際は、中学の時から男女仲良く、いい刺激を与え合いながら過ごしてくれています。今年度の女子生徒の割合は、「高等部:中等部」で約1:2です。

――前回のグラフでも見たように、中学から入ってくる優秀な女子が躍進の原動力だった。これが一つ目の秘密ですね。

飯田 2020年からの大学進学実績に大きく貢献しています。女子中等部は1クラスから始めましたが、いまの中1と中2は2クラスに増やしています。これも変革ですね!

――となると、今後さらに合格実績が伸びそうですね。

女子生徒は少数派とはいえ、学園をリードする存在となっている。東大の研究室訪問時の様子 写真提供:西大和学園中学校・高等学校