開校したばかりのKH8にアジア中から集まった生徒たち(2019年) 写真提供:スティーブン・バード氏

日本にも進出するパブリックスクール

――他にも生徒の生活上で違いはありますか。

バード パブリックスクールは伝統的に土曜も開校していますが、一部の学校は月曜から金曜となっています。日本の場合、土曜には一般的な授業に加えて、視野を広げるための行事や活動が用意されていることが多いようです。

 長期休暇は、日本の場合は春夏冬に合わせて12週間ほどあります。その間も補講や部活で学校に来ることも多いようです。宝仙学園でも、この期間に海外での異文化交流プログラムを実施しています。パブリックスクールの場合は通常、長期休暇期間中は宿題などが課されることはなく、学校も閉鎖され、クラブ活動もできません。

 授業は年間36週間で、三つの学期は前後6週間ずつに分けられ、その間に1~2週間の休みが挟まれるのが普通です。

――日本国内では、岩手の安比高原にあるハロウ校(Harrow International School Appi Japan)が2022年8月にまず開校し、柏市の千葉大柏の葉キャンパス内にラグビー校(Rugby School Japan)が今年8月開校予定となっています。東京学芸大学小金井キャンパスからも近い文化学園大学小平キャンパスの建物を転用して、9月にもう1校開校する予定ですね。

バード マルバーン・カレッジ東京(Malvern College Tokyo)ですね。2月にはPRも兼ねたオープニングセレモニーが英国大使館で行われました。寮は設けないようなので、一般的なインターナショナルスクールです。他の2校とは異なり、Aレベルではなく、IBプログラムを採用しています。

 英国のAレベルは3教科ですから、IBよりも取得するのは楽です。私の娘は香港でIBDPを取得しました。こちらの方が学ぶ幅も広く、教科数も多いため、難しい面もありますが、大学入学後もその学びの経験が生きると思います。

 このようなイギリスのパブリックスクールが日本で開校することは、選択肢が広がるという意味で、とてもエキサイティングなことです。

――パブリックスクールが日本に続々と進出してくる中、どのような国際化教育を行っていこうと考えていますか。

バード 宝仙学園では、3~4カ月の1ターム(学期)留学を中心に進めていきたいと考えています。休学して1年間の留学ともなると部活動など生活にも影響がありますし、1~2週間の滞在では刺激になるぐらいですから。あくまでも日本の教育を軸に、バランスの取れた国際化教育を進めていきたいと考えています。

――ところで、日本に戻られたのはなぜですか。

バード ずっとマレーシアで働くつもりでしたが、コロナ禍の影響で帰国しました。自分も家族もいつどうなるか分からない、という状況が続き、何を優先すべきか考え直した結果です。

 4年間、パブリックスクールで教えたことは貴重な経験でした。この経験を日本の学校で生かし、一人でも多くの生徒が、英語の苦手意識を払しょくし、海外に目を向けるきっかけを作れればと、今は考えています。そのために、つくば市にある自宅から、毎日片道2時間かけて通っています(笑)。

宝仙学園を訪問したマルバーン・カレッジの幹部(上)、マルバーン・カレッジ東京の設立代表であるマイク・スペンサー氏(右側)と英国大使館にて(左下)、クライストカレッジ・ブレコン校教頭のサイモン・ヒル氏と宝仙学園前で(右下) 写真提供:スティーブン・バード氏