【ダメなタイプ②】過干渉
――自分の価値観を押し付ける

 過干渉な保護者の典型は、自分の知識や価値観を子どもに押し付けてしまうパターンです。たとえば、人事に携わっている保護者が「あの業界はダメ」「あの企業はダメ」と決めつけたり、「あなたはこれに向いていない」「こっちの道に行きなさい」と誘導したりすることがあります。

 中には、祖父母が就職活動の資金を握っているというケースもありました。「就活塾には資金を出さないが、AI関連のトレーニングになら出す」といった条件を付けて、お子さんの進路を金銭面からコントロールしようとしていたのです。祖父母に逆らえない状況をつくられた学生は、自らの意志を押し殺していました。

 このような状況では子どもに、「自分の人生を“選べなかった”」という感覚が残り、後悔や無力感に繋がります。

 また、保護者がエントリーシートに添削を入れるケースもよく見受けられます。親としては、できる限りのことをしてやりたい一心で、「自分は人事経験があるから」「ビジネス文書を見慣れているから」と手を加えてしまうのだと思いますが、これは逆効果です。

 大切な我が子の未来を思う気持ちは、もちろん理解できます。助言というスタンスで関わることには意味がありますが、代筆や過度な添削は、本人の言葉が失われてしまい、かえってマイナスに働く可能性があります。

 仮にエントリーシートが選考を通過したとしても、自分で書いていないエントリーシートについて面接で語ることはできません。この結果、面接で落ちることが多いのです。そうなると子どもは誰を責めていいか分からず、親子の信頼関係が損なわれたり、就職活動そのものがトラウマになったりする可能性もあります。

 最近は保護者が就職関連の説明会に同席する例も増えていますが、中には、子どもが話す前に自らの意見を述べたり、同意を促したり、子どもが話そうとしても遮って喋らせない保護者もいます。「あなたは〇〇よね」「あなたは△△だから」と、子どもを自分の延長として考えているのです。成人した子どもを一個の人格として認めないのは、後々のことも考えると非常に問題があります。

わが子に言ってはいけない
絶対NGワード

 保護者に求められるのは、子どもが困っているときや相談されたとき、適切にフィードバックをする姿勢です。子ども自身が気づいていない強みや弱みを保護者が一番よく分かっているということもよくあります。

 たとえば、自己分析の「壁打ち」相手として、お子さんが話してきたことに対して客観的な意見を述べる。それがコントロールではない、適切な関わり方です。一方的なアドバイスではなく、子どもが「求めてきたとき」に、子どもが気づいていないことに気づかせてあげるのが理想のかたちです。そうすることで、子どもはまた自分の力で歩み出すはずです。

 最後にもう一つ、とても重要なことがあります。それは、最終的に子の選択を信じ、見守る勇気をもつことです。

 子どもがやっと内定を獲得したその瞬間こそ、親がすべき最大の支援は「心からの祝福」です。「本当にその会社でいいの?」という、たったその一言で、それまでの子ども努力や積み重ねは台無しになってしまうこともあります。

 子どもが妥協せず本当に納得しているのであれば、それは最高の内定です。保護者は決して自分の基準で結果を「ジャッジ」せず、お子さんが選んだ新しい人生の可能性を信じ、心から労い、祝福してあげてください。

 就職活動は、社会人になる前に、子どもが「自分で選択して進む」練習の場でもあります。自分で選んだ道であれば、仮に失敗したとしても、そこからは必ず何かを学びを得て、次に繋げることができます。しかし、人から言われて選んだ道で失敗すると、「親のせいで道を過った」という他責思考を避けるために、「信じた私が悪かった」と思うしかなく、後味の悪い後ろ向きな思いしか残りません。

 人は一人で生まれ、最期は一人で死んでいく存在です。最終的には自立しなければなりません。そして「自立」とは、私が考えるに、自分だけで生きるのではなく、自分の大切な家族を背負って立つ覚悟を持つことです。

 就職活動は、子どもが親から精神的に自立し、親自身も子どもを手放す勇気が試される時です。親子共に成長する機会として、「信じて見守る」という大きな一歩を踏み出してみませんか。

(本稿は、『絶対内定2027 自己分析とキャリアデザインの描き方』『絶対内定2027 エントリーシート・面接』の発売を記念した、オリジナル記事です)

杉村貴子(すぎむら・たかこ)
株式会社ジャパンビジネスラボ代表取締役社長/キャリアデザインスクール・我究館館長/『絶対内定2027』シリーズ共著者、国家資格キャリアコンサルタント
青山学院大学経済学部卒業後、日本航空にて客室乗務員(CA)として勤務。その後、夫・杉村太郎のハーバード大学ケネディスクール留学に帯同し、帰国後はテレビ朝日・BS朝日にてニュースキャスターとして活躍。社会の最前線から情報を伝える立場を経験したのち、証券アナリストに転身。上場企業の経営者100名以上に直接インタビューを行い、企業分析や業界研究のスキルを培う。その後、大和総研にてマーケットリサーチ、営業支援、広報、そして新卒採用(インターンシップ設計を含む)や人材育成など幅広い業務に従事。採用と育成の“企業側”のリアルな視点を熟知している。2014年に株式会社ジャパンビジネスラボ代表取締役に就任。2023年よりキャリアデザインスクール「我究館」の6代目館長として、学生の「本気の就活」に伴走し続けている。多彩なキャリアと人生経験を活かし、「やりたいことが見つからない」「自分に自信が持てない」と悩む学生一人ひとりに寄り添い、我究(自己分析)を通じて“自分だけの道”を見つける支援を行っている。