
中室牧子
第20回
大西英男議員の事務所から受けた、受動喫煙記事への抗議に対する回答
2018年5月8日、本連載にて受動喫煙に関するエビデンスを詳しく解説した記事を公開したところ、大西英男議員事務所より抗議の電話を頂戴した。「受動喫煙規制で売上が下がった飲食店の意見は無視か」「外国の調査結果を日本に適用できるのか」といった、非常に示唆に富むご意見をいただいた。これらの疑問にお答えすることは、受動喫煙に関する議論を深め、公益に資すると判断し、回答を記事として公開する。

第19回
受動喫煙規制は「前時代的な利害調整」との戦いだ
2017年3月頃より白熱している受動喫煙規制に関する議論。自民党たばこ議員連盟の強い反対に合い、厚生労働省による健康増進法改正案が骨抜きになったのは記憶に新しい。しかし、受動喫煙規制に反対する主張はまったく科学的根拠(エビデンス)に基づいていないと、慶大准教授の中室牧子氏、UCLA助教授の津川友介氏は指摘する。「国会議員が自身の周辺の声だけを拾って政策を形成する前時代的な議論だ」と辛辣だ。これまでの議論を整理しつつ解説する。

第18回
2017年「ベスト経済書」第1位受賞記念『「原因と結果」の経済学』著者インタビュー
政策形成、教育、医療、労働などの分野で「エビデンス(科学的根拠)」という言葉が近年にわかに注目を集めている。そんななか、この「エビデンス」を導き出すための考え方である「因果推論」についてわかりやすく紹介した書籍『「原因と結果」の経済学』が、『週刊ダイヤモンド』の「ベスト経済書」で第1位を受賞。それを記念し、著者に意図や制作秘話について語ってもらった。

第17回
NHKのAI特番が炎上!「AI崇拝」の危険
2017年7月22日に放送されたNHK総合の「AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン」が炎上中だ。医療政策学者で『「原因と結果」の経済学』の著者、津川友介氏は「AIは万能である」というNHKの演出に危機感を抱いているという。どういうことか、詳細を聞いた。

第16回
「比較可能なグループで穴埋め」することが因果推論のキモである
ある2つの変数のあいだに因果関係があるということを証明するには、事実における結果と反事実における結果を比べる必要がある。しかし、反事実は現実には観察することができない。この問題を克服するには、どうすればよいのだろうか。

第15回
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でわかる因果推論
ある2つの変数の関係が「因果関係」であると証明するためには、「まったくの偶然」「交絡因子」「逆の因果関係」の3つが存在しないということが言えなければならない。では、どのように証明すればよいのか。

第14回
警察官が多いから犯罪が起きる?注意しないとだまされる「逆の因果関係」
「まったくの偶然」の次に私たちが疑ってかからなければならないのは、原因と結果の両方に影響を与える「第3の変数」の存在だ…

第13回
ウォール街の投資家さえだまされる「見せかけの相関」とは?
2つのことがらのうち、片方が原因となって、もう片方が結果として生じた場合、この2つのあいだには「因果関係」があるという。 一方、片方につられてもう片方も変化しているように見えるものの、原因と結果の関係にない場合は…

第12回
チョコレートの消費量が増えるとノーベル賞受賞者が増える?
2012年、世界でもっとも権威ある医学雑誌に、「国民のチョコレートの消費量が多くなるほどノーベル賞受賞者が増える可能性がある」という研究が発表された。2013年には安倍政権が成長戦略の柱として打ち出した「女性の活用」でも「日本人女性のノーベル賞受賞者の誕生を目指す」との一文が入っていることを考えると、日本はノーベル賞受賞者の数を増やすために国民のチョコレートの摂取を推奨するべきなのだろうか?

第11回
医療費の自己負担割合を高くすると人々の健康状態はどうなるのか
高齢化の影響で日本の医療費は年々高くなっており、近年、社会問題化になっている。この問題に対処する方法の1つとして、自己負担割合が低い高齢者に対して、優遇をやめて自己負担割合を若年者と同じレベルまで上げるべきという意見がある。その一方で、病気を持っていたり体の弱っている高齢者の自己負担割合を高くすることは、高齢者の健康にとってマイナスの影響があるのではないかと危惧する声も聞かれる。どちらの意見が正しいのだろうか。

第10回
勉強ができる友人と付き合うことになっても自分の子どもの学力は上がらない?
受験シーズンも終わり、自分の子どもの進路が決まった人も多いだろう。多くの親が自分の子どもを少しでも偏差値が高い学校に入れさせたいと考える背景には、「学力が高い友人と一緒に生活を送ることで、いい影響を受けて、願わくばそれによって自分の子どもの学力も上がってほしい」という願望があるのではないか。しかし、中室牧子氏と津川友介氏によれば、「学力の高い友人と付き合っても自分の学力は上がらない」という。

第9回
恐怖で子どもをしつけても意味がない
学校などで人が交通事故にあった映像を見せられ、「道路を飛び出してはいけない」と教えられた人は多いのではないだろうか。子どもが交通事故にあわないように、事故がいかに怖いものなのか説明する親もいるかもしれない。このような教育法を「スケアード・ストレート」と呼ぶ。しかし、中室牧子氏と津川友介氏によれば、この教育法は意味がないどころか、逆効果を生む可能性すらあるという。

第8回
受動喫煙を厳しくすると飲食店の売上は減るのか
受動喫煙防止法案に関する議論が続いている。受動喫煙が周囲の人の肺がんのリスクを上げることは疑いがないのだが、飲食店の売上が減ることを心配している飲食店の経営者や一部の国会議員から反対の声が上がっている。飲食産業に8400億円の経済損失を指摘する調査結果を目にした人もいると思われる。しかし、中室牧子氏、津川友介氏によれば、「8400億円の経済損失を指摘したレポートは今回の政策の判断材料にするべきではない」という。

第7回
女性管理職を増やすと企業は成長するのか
安倍政権は女性の積極登用を成長戦略の1つとして掲げている。女性管理職が増えれば、企業内の人員が多様化し、新しい視点や価値が提供され、パフォーマンスが向上すると期待されている。しかし、中室牧子氏、津川友介氏によると、女性管理職を増やすことが「成長戦略」と言えるのかは、冷静に考える必要があるという。詳細を聞いた。

第6回
「日本人なら」受動喫煙をしても健康に悪影響はない?
世界的にはすでに受動喫煙が肺がんのリスクを上げるのは確実であると証明されている。しかし、日本人については、「受動喫煙が健康に悪影響を与える」という確たるエビデンスがなかった。それが、日本で受動喫煙の防止が遅れている原因の1つと言える。はたして、日本人なら受動喫煙をしても健康に影響はないのだろうか。

第5回
飲食店を全面禁煙にすると人々の健康や店の売上はどうなるのか
受動喫煙に対する議論が加熱している。政府は現在、屋内での受動喫煙の防止対策を強化する法案を国会に提出する準備を進めている。しかしこの法案に対し、反対意見が続出した。はたして受動喫煙はどれくらい周囲の人の健康に悪影響があるのだろうか。また、飲食店での喫煙を全面禁止すると、飲食店の売上は下がってしまうのだろうか。

第4回
テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
子どもがテレビを見過ぎていることを気にしている親は多いはずだ。厚生労働省の統計によると、小学校6年生の子どもは平日に約2.2時間、休日には約2.4時間もの時間をテレビの前で過ごしているようだ。これでは親が心配するのも無理はない。しかし、テレビが子どもの学力に悪い影響があると決めつけるのは早計である。

第3回
メタボ健診を受けていれば長生きできるのか
私たちは、会社や学校で健康診断を受けることが多い。最もよく知られているのは「メタボ健診」だろう。メタボ健診によって、自分の健康状態を知り、生活習慣病を予防したり、隠れた病気を発見できれば、長生きにつながるはずだと多くの人が信じているのではないだろうか。しかし、メタボ健診が長生きにつながるかどうかは慎重に検証しなければならない。

第2回
偏差値の高い大学に行っても将来の収入が上がらないって本当?
「偏差値の高い大学へ行けば将来の収入が高くなる」と信じている人は多いだろう。しかし、「収入が高くなるような能力の高い人ほど、偏差値の高い大学を選択した」だけなのか(相関関係)、「偏差値の高い大学に行ってよい教育を受けたから、収入が高くなった」のか(因果関係)、どちらなのかはよく考える必要がある。

第1回
「相関関係」と「因果関係」の違いを理解すれば根拠のない通説にだまされなくなる!
「●●教育法によって、東京大学に合格!」「■■を飲んだら、がんが治った!」巷では、このように、ある教育・医療の効果を喧伝する本を見かけることが多い。しかし、慶應義塾大学の中室牧子氏およびハーバード大学の津川友介氏によると、これらの本の内容を鵜呑みにしても、子どもが東京大学に合格したり、がんが治るとは限らない。なぜなら、「●●教育法で育てる」ことと「東京大学に合格する」ことのあいだ、あるいは「■■を飲む」ことと「がんが治る」ことにあいだには、「因果関係」があることが証明されておらず、「相関関係」しかないからだという。これはどういうことだろうか。
