広島サミットが示唆する長期投資トレンド、多極化シフトと少子高齢化に投資する6つの視点Photo:PIXTA

グローバル化から多極化へのシフトと少子高齢化の進展と人口減少。この2つのトレンドは長期投資を考える上での示唆を与えてくれる。この2つのトレンドから切り取った6つの長期投資テーマを解説する。それぞれ株式市場における性格が異なるため、リスク分散にも寄与する。(クレディ・スイス証券 ウェルス・マネジメント チーフ・インベストメント・オフィサー・ジャパン 松本聡一郎)

グローバル化から多極化へのシフトと
少子高齢化の進展と人口減少

 行動制限が解除され海外からの訪問客が急増し、世界がパンデミック後のステージに移行したことを実感した人が多かっただろう。

 また5月は、広島サミットが開催された。G7(先進7カ国)と呼ばれる民主主義を標榜する先進諸国に加え、このサミットには多くの招待国、戦時下のウクライナもゲスト国として参加した。

 この顔ぶれを見ると、パンデミックそしてウクライナでの戦争を経て、民主主義と権威主義の対立を軸とした世界の多極化が進んでいることが理解できるだろう。

 広島サミット後の内閣支持率上昇を追い風に、総選挙の可能性を探る報道も増え、国会では少子化対策を巡る議論が盛り上がっているようだ。

 具体的には、当初話題となったフランスで効果があったといわれるような減税方式案ではなく、手当の積み増しを実質的な増税で賄う案が議論の中心になっているようだ。後者の方が行政コストはかさむだろうが、行政がコントロールする部分も増え、魅力的なのだろう。

 この二点は、長期投資を考える投資家に有意義な示唆を与えている。一つは、グローバル化から多極化へのシフトであり、もう一つは少子高齢化の進展と人口(働き手)減少である。

 4月に著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が来日し、同氏の投資スタイルへの関心が高まった。この投資スタイルを左右する重要なファクターは、投資の時間軸(タイムホライズン)だ。

 短期の時間軸を持つ投資家は、短期的に変化していく要素(モメンタムなど)に着目して投資判断を行っていくだろう。中期的な時間軸を持つ投資家は、景気や金利のサイクルなど数四半期で変化していく要素に着目するだろう。長期の時間軸を持つ投資家は、長期にわたり変化が少ないトレンド(人口動態など)に注目するだろう。

 クレディ・スイスが提唱している長期投資テーマ「スーパートレンド」は、2つの長期的に変化が少ないと考えているグローバルのトレンドに着目している。一つはグローバル化から多極化へのシフトであり、もう一つは少子高齢化の進展と人口(働き手)減少である。

 そして、これら2つの長期トレンドを6つの視点から投資テーマとして切り取った。次ページ以降、その内訳とテーマの特徴を解説していく。