2023年、株価は好調なスタートを切った。しかし、米国のインフレと政策金利の見通し、企業業績、株価のバリュエーションの動きを子細に分析すると、好調の株価を支えている根拠は危うい。株価の先行きは慎重に見ざるを得ない。(クレディ・スイス証券株式会社 ウェルス・マネジメント チーフ・インベストメント・オフィサー・ジャパン 松本聡一郎)
リスク資産の保有比率が回復
年初から好調な株価
2023年、マーケットは思いのほか良好なスタートとなった。厳しい年となった22年、ほとんどの資産クラスが値下がりし、投資家は守りを固めリスク資産の保有比率を大きく引き下げた。
欧州はウクライナでの戦争の影響もあり、この冬には深刻なエネルギー不足からリセッション入りが不可避のように思われた。
しかし、ユーロ圏では、エネルギーの節約や調達先の拡大の取り組みを進めてきたことに加え、暖冬により需要が緩んだことでエネルギー不足に陥らず、リセッション回避が現実味を帯びてきている。さらに想定より早い段階で、中国がゼロコロナ政策解除に踏み切ったことも、景気の支援材料となった。
また米国でも、かつてないペースで利上げが進められてきたが、労働市場の堅調さもあり、同様にリセッション回避シナリオの可能性が高くなってきた。
こうした期待の変化が呼び水となり、大きくアンダーウエートしていたリスク資産へ資金を呼び戻す動きが年初からより活発となったようだ。株式市場ではGAFA関連を含む成長株、また債券市場では格付けのより低い債券がアウトパフォームした。
またスワップ市場は、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げプロセスを終了させ、景気を支えるために金融政策を転換し年後半には利下げを開始することを織り込み始めていた。
マーケットは、すでに新しい局面に入ったのだろうか? それとも一時的な揺り戻しなのだろうか? 次ページ以降、検証していく。