小林千紗
日本経済はインフレのある世界に入った。賃金と物価の好循環が見通せるとして日本銀行がマイナス金利解除に踏み切ったのがその証左である。今後の日本の株式市場においては、コーポレートガバナンス改革への取り組みの差が企業価値の格差となり、新陳代謝が進む。

日経平均株価が高値更新を続けている。米国株上昇や円安といった外部要因のサポートに加え、日本企業の企業統治改革や昨年を上回る賃金上昇期待など内部要因も株価を支えている。ただ、今後米国の連邦準備制度理事会(FRB)の利下げに伴う円高転換などを考慮に入れると、24年の投資対象は質の高い銘柄に絞る方がよいだろう。

AI市場は2027年には4200億ドルに拡大し、22年の15倍の規模に達する。24年にAI関連の銘柄で最も市場拡大の恩恵を受けるのはどの業種か。サイクルに基づいて分析するとともに24年の市場全体の環境を検証する。

2023年は利上げが継続する中、拡大を続けた世界経済と円安が日本株を支えた。24年はこの二つの要因が反転する可能性が高い。そうした環境下では、高成長かつROE、利益率が改善し、財務体質が良好な質の高い銘柄が優位に立つ相場となるだろう。

2024年から新NISAがいよいよ始まる。相場のけん引役として期待する声も少なくない。しかし、これまでのNISA口座の動向を見る限り、相場を下支えすることはできても、上値をけん引することはなさそうた。ただ、日本の投資家の志向が安全性から収益性へ変化していることは中期的なドライバーとして注目に値する。

AI関連銘柄と聞いて真っ先に思い浮かぶのは半導体メーカーだろう。しかし、AI市場が成長していくにつれて中心となるセクターは変わっていく。来年以降、ソフトウエア企業、インターネット企業に株価の上昇余地があるとみている。

足元では米国の金利、景気動向が日本の株式市場を左右している。だが、2024年にかけては安定的なインフレの定着がもたらす日本企業の変化に投資家の目が向き始めそうだ。それは自社株買いに代表されるコーポレートガバナンスの改革と事業再構築によるROE(自己資本利益率)の向上である。
