2024年3月期に過去最大の最終赤字に陥った住友化学が構造改革を加速させている。巨額赤字の要因となった石油化学と医薬品に代わり、祖業の農薬と半導体材料を事業の中核に据える。8月には経営の足かせとなってきたサウジアラビアの石油化学事業ペトロ・ラービグへの出資比率の引き下げを決めるなど大胆なリストラにも踏み切った。特集『化学サバイバル!』の#5では、岩田圭一社長を直撃。岩田氏が今後、住友化学はどのように稼いでいくかについて、各事業が持つ強みを挙げながら明かした。一方、切り離しを検討している傘下の住友ファーマの行く末や、ラービグや石油化学再編の今後の見通しも語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 金山隆一)
化学も医薬品も積極リストラ
事業構造改革の総仕上げへ
――12月に放射性医薬の子会社、日本メジフィジックスを完全売却しました。
たとえ収益が出ていても、その事業にとって住友化学がベストオーナーなのかという観点で決断しました。日本メジフィジックスは成長しており、アルツハイマー病の診断薬も新たに導入する面白い事業ですが、住友化学より世界で一番強い米GEヘルスケアがオーナーになる方がふさわしいと判断しました。
――この1年で、千葉の汎用樹脂プラントの停止、アクリル樹脂原料の生産4割減、サウジアラビアで2兆円を投じた石油化学事業への出資の大幅な引き下げ、プラスチック着色剤からの撤退など積極的にリストラを進めています。一方で、株式市場は反応していません。
事業の再構築はこれからもっと進めていきますし、成長事業にも投資し、それが四半期、半期、1年の実績の数字として出てくるはずです。すると、市場の評価も変わってくると思います。
――中期経営計画では、2030年のコア営業利益2000億円のうち、アグロ&ライフソリューションとICT(情報通信技術)&モビリティソリューション、つまり農薬と半導体材料でそれぞれ1000億円を目指します。医薬品(アドバンストメディカルソリューション)と化学(エッセンシャル&グリーンマテリアルズ)の2部門は35年で合計1000億円にとどまります。この長期目標は達成できるのでしょうか。
次ページでは、農薬と半導体材料で利益の約7割を稼ぐという住友化学の将来像に向けた変革の道筋を岩田社長が解説する。また、出資比率引き下げを決めたサウジアラビアの石油化学事業ペトロ・ラービグからの完全撤退はないのか。住友化学に代わるベストオーナーの探索を始めた住友ファーマの売却先候補と切り離しのタイミングは。さらに、石油化学再編の今後の見通しとは。