関税地獄#3トランプ米大統領が日本に開発負担を迫るアラスカLNGの完成予想イメージ 出所:alaska-lng.com

トランプ米政権の相互関税を巡り、米アラスカ州のLNG(液化天然ガス)輸出事業が日米間の交渉カードに浮上してきた。ベッセント米財務長官が4月8日、日本との協議にあたり同事業を重視する姿勢を示した。ただ、同事業は7兆円近い巨額投資が必要になるとみられ、日本にとっては中東から輸入するLNGよりも割高になる可能性がある。緊急特集『関税地獄 逆境の日本企業』の本稿では、同事業を巡る、日本のガス業界やプラント業界などが抱える懸念を明らかにするとともに、米国からのLNGの購入圧力の回避策を模索する。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

日本の総需要の3割に匹敵
巨大LNGプロジェクトの欠点

 トランプ関税を巡り、日米で交渉カードに浮上しているアラスカLNG(液化天然ガス)は、北極圏のガス田を活用し、アラスカ北部のノーススロープから南部のニキスキに至る約807マイル(約1300キロメートル)のパイプラインを建設し、日本の年間総需要の約3割に相当する年産能力2000万トンのLNGプラントを新設するプロジェクトだ。出荷基地が太平洋岸に接することから日本や韓国、台湾などへの輸出が想定されている。

 米国の東海岸のLNGプロジェクトと異なり、干ばつによる渇水で航行不能になったこともあるパナマ運河を運航せずアジアに輸出できるメリットはある。ただし総投資額は長距離のパイプラインを敷設することもあり、約440億ドル(約6兆6000億円)が見込まれている。中東などから輸出するLNGプロジェクトより高くなることは確実で、日本は関税緩和の見返りに高いLNGを買わされる羽目になるかもしれない。しかも、問題はそれだけではない。

 次ページでは、日本のガス業界やプラント業界が懸念するアラスカLNGが抱えるさらなる問題と、購入圧力を回避するウルトラCを模索する。アラスカ以外のLNG確保に向けた日本に求められる“したたか”な戦略についても探る。大きなポイントとなるのが輸送ルートだ。どういうことか。