日本の製造業の基盤である石油化学コンビナートが大きな岐路に立たされている。エチレンプラント(ナフサ分解炉)から排出される二酸化炭素(CO2)の削減と、中国の化学品の過剰生産の影響で低迷が続く稼働率の向上を目的に、国内に12あるエチレンセンターの生産能力の削減が始まっているのだ。国内大手が合従連衡に動いているが、再編がさらに加速する可能性もある。特集『化学サバイバル!』の#7では、日本のコンビナート再編の先行きを大胆に予想する。生産を停止する可能性のあるコンビナートを挙げるとともに、大手首脳への取材を基にしたコンビナート再編の最終形も示す。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
千葉と西日本で石化再編が進展も
内需は300万トンまで減る可能性
石油化学コンビナートの再編が加速している。日本最大のコンビナートがある千葉県の京葉臨海工業地帯では、四つあるエチレンプラントのうち、丸善石油化学が2026年に、出光興産が27年に生産を停止することを決めた。
西日本では、
ただし、これではまだ十分とはいえない。経済産業省が2050年に想定するエチレンの内需は年間400万トンだ。現在、日本全体のエチレン生産能力は600万トンに上るが、今回のプラント集約では、500万トン程度までしか削減されない。
足元では、中国の化学品の大増産を背景にコンビナートの稼働率は低迷している。石油化学工業協会によると、10月のエチレン生産設備の稼働率は77.4%(速報ベース)。好不況の目安とされる90%を27カ月連続で下回っている。これはデータがある1991年以降で最長だ。
化学最大手の三菱ケミカルグループの筑本学社長は内需が300万トンまで減る可能性を認める。プラスチックの消費減やリサイクル品の増加で、経産省の想定よりも内需が下振れする可能性があるのだ。つまり、国内のコンビナートの稼働率を上げるためには、さらなる生産能力の削減が欠かせない。
実は、筑本氏に限らず、化学大手の首脳らはさらなる再編を念頭に置いている。では、今後、石化コンビナートの再編はどのように進むのか。次ページでは、国内のコンビナートの先行きを大胆に予想した再編図を公開する。生産を停止する可能性のあるコンビナートを挙げるとともに、大手首脳への取材を基にした再編の最終形も示す。
最終形のひな型となるのが、旧昭和電工が旧日立化成を買収して発足し、半導体シフトを進めるレゾナック・ホールディングスの取り組みだ。同社は25年1月に大分の石化事業を独立・分社化するパーシャルスピンオフ(部分離脱)を実行する。業界の“異端児”ともいえるレゾナックの取り組みがひな型になるとはどういうことか。