変動が激しい再生可能エネルギーの有効活用策として蓄電池が脚光を浴びている。政府の補助金もあり、電力・ガス、石油元売り、情報通信、鉄道、不動産、商社、金融リース、新電力などの企業が日本各地で大型蓄電所の開発に乗り出した。伊藤忠商事も大型蓄電所や太陽光発電、秋田県沖での大型洋上風力発電を計画。パートナーはJERA、大阪ガス、関西電力、カネカ、東急不動産、東京都、グーグルと多岐にわたる。彼らは伊藤忠の何に期待しているのか。実は伊藤忠は1990年代から蓄電池の可能性を見越して事業を広げてきた。特集『伊藤忠 三菱・三井超えの試練』の#3では、安部泰宏電力・環境ソリューション部門長に課題とリスクを聞いた。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
大手5商社が系統蓄電所に参入
補助金総額は500億円超に!
太陽光発電や風力発電など気候の変動で発電量が大きく変動する再生可能エネルギーの電気を有効活用する取り組みとして、送電線と蓄電池を直接つないで充放電する系統用蓄電池事業が日本全国で計画されている。
これまでは需給のミスマッチで作り過ぎた再エネの電気を無駄に捨てていた。しかし政府はこの脱炭素電源の有効活用に向け、2022年5月に系統(送配電網)につなぐ大型蓄電池を発電所として認める法改正を行った。さらに電力の需給を調整することで、報酬が得られる電力市場を整備し、新規参入を促す取引制度を創設。政府や自治体も大型蓄電所の開発に対する補助金を用意し、これまでに56件の事業に425億円以上を交付した。この夏にはさらに経済産業省が90億円を補助する。
こうした補助金に飛び付いたのが、電力・ガス、石油元売り、新電力などのエネルギー企業、不動産、鉄道、金融リース、そして大手商社だ。
4月には、住友商事が2000億円を投じ、全国に系統蓄電所を整備する計画が明らかになった他、豊田通商や三菱商事、丸紅なども北海道や九州を中心に大型蓄電所を計画する。伊藤忠も系統用蓄電所の運営や蓄電システムの提供など、複数のプロジェクトに参画。パートナーとなる企業は、電力、ガス、不動産、化学、自治体、米グーグルの日本法人と多岐にわたる。なぜここまで多くのプレーヤーが伊藤忠と組むのか。実は、伊藤忠は「電池が次世代エネルギービジネスの核になる」と構想し、1990年代から蓄電池ビジネスに取り組み始めていた。
次ページで伊藤忠の蓄電プロジェクト一覧と30年かけて構築してきた蓄電ビジネスのメニューの全貌を明らかにする。その上で、同社の電力・環境ソリューション部門の安部泰宏部門長に可能性とリスクを聞いた。