国交省の高齢者居住安定法による制度で介護保険法とは別体系。介護保険法や老人福祉法では解決できない待機者問題を厚労省とは異なるシステムで取り組もうという作戦だ。

 2011年10月から始まったサ高住制度は、今や20万人分の要介護者の受け皿として関係者に浸透しつつある。1部屋に100万円もの巨額の税を投入して国が強力に後押ししたからだ。単なる賃貸住宅事業に、それも民間企業に対してこれほどの財政支援は異例のこと。「憲法違反では」との声も押し切った。

 企業に税を投入するというこのサ高住方式を全面的に取りいれたのが企業主導型保育所である。

企業の力に頼らざるをえなくなった保育

 政権としては参院選挙の争点から待機児問題を外したいという思惑も働いたのだろう。それ以上に従来の社会保障制度の限界を悟ったともいえる。企業の力を頼らざるをえなくなったと見るべきだろう。

 各地で開かれた説明会では、定員を上まわる参加者を集めて大盛況だった。6月末に締め切った第1回の申請者は約300件に達した。

 企業主導型保育所は、一般企業が保育所を従業員や地域の乳幼児向けに作ることである。既存の「事業所内保育所」と似ているが、その枠組みを大幅に変えて全く別体系にした。

(1)認可保育所並みの補助金を投入し、(2)保育士の配置や定員などの基準を大幅緩和、(3)事業の届け出先を従来の市区町村の自治体でなく国に、(4)設置場所は事業所内や従業員の通勤経路でなくてもどこでもよく、複数企業の共同事業でもいい――。

 事業所内保育所でも国基準を満たせば、認可保育園として一定の助成金を受けられるが、社員以外の地域の子どもを受け入れなどハードルが高い。全国約4000の事業所内保育所のうち認可園は僅かに150ヵ所にとどまる。

 そこで、整備基準のハードルを下げつつ、認可外保育所でありながら認可園並みに施設整備費の4分の3を助成することになった。開設しやすいように従事者のうち保育士は半分でもよいとした。

 例えば、定員12人(ゼロ歳児3人、1~2歳児9人)で、働く保育士の比率が5割の場合、年約2600万円の運営費が得られる。開設時の整備費も、定員30人の場合で約8000万円も渡される。

 こうした手厚い補助金があれば、中小の小売業や飲食業、深夜稼働の工場などでも開設が容易になる。そうした職場にはパートや派遣などの非正規労働者が多く、認可園への入園が難しかった。

「会社がつくる保育園」というキャッチフレーズで旗が振られているが、その会社の従業員の子どもだけでなく、別の企業の従業員にも開放され、なお、地域住民にも枠を広げている。つまり、従来の事業所内保育所の制約から踏み出して、地域の企業や住民が共同で立ち上げることができる。