このコラムの執筆陣は、ビジネススク-ルで教育・研究に携わっている。
ここでビジネススク-ルとは、研究者の養成を目的とした大学院とは異なり、経営分野の高度専門職業人の育成を目的とした専門職大学院であり、一定期間に所定の単位を取得した人に「経営学修士(専門職)」の学位を与えている。この学位は英語でMaster of Business Administration(MBAと略す)と呼ばれている。
広い視野を持ち、
深く考える人材を育てる
MBA取得者に対して、企業は「汗をかこうとしない」とか「大きな仕事をやりたがる」と批判する反面、「広い視野を持ち、深く考えることのできる人材」として評価している。
なぜ、MBA取得者は広い視野を持ち、深く考えることができるのか?その理由を明らかにするために、ビジネススク-ルの教育について説明しよう。
ビジネススク-ルは、多種多様な業種から優秀な人材(学生)を受け入れている。このような学生間のコミュニケ-ションによって、個別企業や業界に特有な知識やノウハウを相対化することができる。
また、ビジネススク-ルの教育の主流は事例研究(ケ-ススタディ)であり、学生は、(国内外を問わず)多くの企業の行動を検討することによって、自らが勤務する企業の行動を相対化することができる。
さらに、教員である経営学者の仕事は、多くの事例を検討することによって、さまざまな経営現象に共通するメカニズム(仕組み)を抽出し、いかなる条件の下で、当該のメカニズムがどのように機能するかを明らかにすることである。このような教員との討論によっても、学生は自らの「モノの見方や考え方」を相対化することができる。