「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。
話題書を「紙1枚」にまとめてみた
私は今年から海外(マレーシア)に教育移住しています。先日、義父母が日本から来てくれたので、「何冊か本を持ってきてほしい」とお願いしていました。そのうちの1冊が、今年の話題作となっている『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著、集英社)です。
『見るだけ読書』と同じ「読書」がテーマということもあり、さっそく熟読しました。評判通りの素晴らしい本でしたので、私なりの学びを『見るだけ読書』と同じフレームワークで「紙1枚」にまとめてみました。
以下、この「紙1枚」にそって本書をガイドしていきます。
「全身から半身」の解像度を上げる
本書では本が読めなくなる理由として、仕事一辺倒を是としてしまう日本の労働環境を挙げています。そこで、「全身」全霊ではなく「半身」で働ける社会を志向し、読書をはじめとした文化的な生活を取り戻していこうと提唱しています。
著者は文芸批評家ですが、私は普段、社会人教育の世界で研修や講演等さまざまな学習機会に登壇している現場の人間です。また、これまでにビジネス書を10冊以上書いてきた作家でもあります。ビジネススキルやキャリア教育の分野で仕事をするにあたって、人材育成やビジネス書・自己啓発書の歴史等について独自に研究も続けてきました。
したがって、本書についても(特に歴史パート)大変興味深く読むことができたのですが、「全身全霊ではなく半身で」と書かれていた部分については、より現場に近い感覚として、もう少し解像度を上げて理解しておきたいと感じました。
まず、私も普段から「諸悪の根源は長時間労働を是とする仕事観」という話をしているので、「半身を目指そう」という主張については100%賛同です。
そのうえで、日々の研修や講演等では、「だからこそ、1時間かかっていた仕事を15分で処理できるようにしよう」「そうやって時間を捻出して、健康で文化的な生活を取り戻していこう」といった流れで、生産性向上に役立つビジネススキルを学んでもらっています。
すなわち、決して「半身=ほどほどでいいじゃないか」ではなく、「半身で済ませられるだけの高い生産性で働けること」に力点を置いているわけです。また、仕事自体は真剣に、熱中して、あくまでも「全霊」で取り組むことを前提にしています。
「全身」で働くしかない人たちにも文化的生活を
加えて、この話はここで終わりません。なぜなら、そうやって「半身で働ける力」を身につけた人の中には、会社からさらに多くの業務を押し付けられ、いつまで経っても限界まで働かされ続けてしまう……。そんなビジネスパーソンも数多くいるという実態があるからです。
だからこそ、「半身で働けるほどに生産性を向上できる技術」を手渡すだけでなく、それでも結局多忙になってしまう人達に、何とかして文化的な生活も両立できるような手助けをしたい。
そんなビジネス現場の切実な悩みに応えるべく、読書を仕事に活かすことができる手法を独自に構築して、『見るだけ読書』のような本として上梓もしています。誤解をしてほしくないのでもう一度明記しますが、私は本書の「半身社会へ」という主張には100%賛同しています。
ただ、社会人教育の現場から本書の主張を見上げてみると、そうは言っても現実的には「全身」で働かざるを得ない人たちが多数いて、彼ら彼女らの顔がどうしても浮かんできてしまうのです。それでも何とか「読書のような文化的な生活も楽しみたい」という生の声に日々直面している立場としては、やはり「読書術」のようなスキルを構築して手渡す責務があります。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んだ人は、「どうすれば働いていても本が読めるようになるのか」に関する現場目線での現実解を凝縮した『見るだけ読書』も、ぜひ手に取ってみてください。
(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』著者の書き下ろしです)