「変わる」グローバル企業の研究・開発活動

 では、なぜそこまで「コミュニティ化」をする必要があるのか。そもそも企業のR&D活動は、秘匿性を守り、時間を多く要することに対して投資(設備・人材)を行っていくことであり、こうしたR&D活動は、一昔前は自社で全て完結させることができた。

 しかし、1990年代ごろから各々の技術が高度化し、技術の1つ1つに求められる精度が上がり、かつ、各技術が複雑・多様化し、精度を上げるだけでなく、それらを統合する目線も必要となった。また、技術革新の速度が、高速化、ある技術を一定レベルまで持っていくスピードが短縮化するなど、R&D活動を取り巻く状況は大きく変わり、全てを自社で囲い込むことは極めて困難になったのである。

 今の時代、高度化した個々の専門分野に特化した外部の組織・人材のほうが、優秀で、速く、多様性があるといえよう。

 開発当初は自社で競争優位があることを秘密裡に開発しても、外部環境の変化が速いため、開発が終わるころには他社から自社より良い技術がでてきて淘汰されてしまう。また、研究・開発は、一定の時間がかかるものだが、その間に世の常識は変化し続けているという認識を持つ必要があり、つねに外部にアンテナを立てていなければならない。

 つまり、自社で全てを行うことは不可能となり、企業は戦略を変え、自社のR&D戦略を「技術パートナー開拓」「優秀な研究人材の獲得」といった目的を達成するため、対外的な発信、連携をせざるを得ない状況になった。また、当然そういう可能性がある人をすべて雇用、契約関係を構築することはできない。こうした背景があり、「コミュニティ化」という策をとるようになってきたのだろう。