紅葉が燃える秋だ。そんな秋の日曜日を利用して妻とともに奥多摩の御岳渓谷を散策した。
留学生時代、日本で発行される中国語新聞に、「私とともに日本を旅しよう」というコラムを長く書いていた。自分で言うのもなんだが、在日中国人の中ではかなり好評を得たコラムだった。10数年後、ある会合で出会った、今や大学教授になったかつての中国人留学生夫婦から次のような話を聞いた。
「学業やアルバイトに忙しかった留学生時代、このコラムを読んでいつかはこうした観光地を歩いてみたいという夢を見ていた。だからコラムを切り取ってスクラップブックにした。家の本棚に今でもそのスクラップブックを保管している。経済的余裕ができてから、莫さんが勧めていた観光地を歩いてきましたよ」
それを聞いて私も嬉しかった。実は、そのコラムでは御岳山も取り上げていた。経済力があまりない留学生でも余暇を利用して楽しめる観光地を紹介しようという趣旨のコラムだったので、そんなにお金をかけなくても非日常性を楽しめるところをできるだけ取り上げた。
都内にありながら山々ときれいな渓谷が見られる御岳山は私のお気入りの観光地だった。目に沁みる新緑の初春と、銀杏の葉の透き通るような黄金色と楓の燃えるような鮮烈な赤がハーモニーをなす秋にはよく訪れた。家族とともに散策したり、友人たちを案内したりする。
特に、はじめて御岳山を旅した中国人の友人たちは、東京にこんなところがあるとは知らなかった、と驚く。私もちょっぴりと鼻を高くする。なんだかお国自慢でもしているようだ。その意味では、私も東京都民になってかなり年季が入ったといえるだろう。
さて今回、御岳渓谷を回って改めて思ったのは、観光資源がまだ十分に活用されているとは言いきれないことだ。