武田薬品 「破壊と創造」最終章Photo:Bloomberg/gettyimages

武田薬品工業の直近のリストラや人事は、米国企業化への加速が透けて見える。このタイミングで米国へ完全に軸足を移すのは正解なのか。米大統領選挙後、製薬業界はどんな影響を受けるのか。連載『武田薬品 「破壊と創造」最終章』の本稿では、ハリス氏が大統領になったケース、トランプ氏が大統領になったケースそれぞれで、製薬業界に何が起こるかを追った。(ダイヤモンド編集部 野村聖子、土本匡孝)

日本での売上高が1割まで縮小
国内事業部門を半減へ

 国内製薬大手の武田薬品工業は8月、日本事業のJPBU(ジャパン ファーマ ビジネス ユニット)と日本のR&D(研究開発)部門でFCP(フューチャー・キャリア・プログラム)を実施すると発表した。FCPとは希望退職者募集、つまり人的リストラである。

 ダイヤモンド編集部が入手したFCPについての労働組合と会社との協議内容が記載された社内文書(本連載『武田薬品の希望退職者募集、“年齢不問”“応募は任意”でも「不適切面談」の不安が尽きない理由』参照)によると、会社側は今回のリストラ後、2025年からJPBUの組織を4部門から2部門に半減させる。加えて、売上高構成比で日本が約10.5%(24年3月期)にまで低下していることから、日本事業を縮小する必要性を説いた。

 9割弱を海外で稼ぐ企業として、世界最大の医薬品市場である米国に軸足をほぼ完全に移す。これが任期10年の節目を迎えたクリストフ・ウェバー社長による構造改革の総仕上げの肝なのだろう。

 ウェバー社長が14年に就任以降、武田薬品は少なくとも日本事業で16年、20年、22年の3度、希望退職者募集を含めた構造改革を敢行している。言わずもがな、この10年武田薬品が目指してきたのは、メガファーマ化。国内製薬企業の体裁を保っているとはいえ、研究開発を含め、米国の本拠地であるボストンが主導権を握る。今夏には、広報部門のトップであるチーフ グローバル コーポレート アフェアーズ&サステナビリティ オフィサーの大薮貴子氏がボストンに渡った。

 しかし、その米国も政治による薬価制度への介入によって“パラダイス”ではなくなりつつある。来月には大統領選挙を控えるが、製薬業界にとって民主党、共和党いずれの候補の当選が望ましいのか。武田薬品が米国へ軸足をほぼ完全に移すのは、吉凶どちらなのか。