GRITテストで自分の「やり抜く力」を知る
GRITとは、タイトルにもあるように「やり抜く力」、つまり、粘り強さであり、コツコツと努力を積み重ねる胆力とも訳せるだろう。
米軍将校を育てるウェストポイント大学の厳しいトレーニングに耐え抜くのは、必ずしも運動神経がバツグンの学生ではない。ネイティブでも聞いたことすらないような難しい単語の綴り言えるかを競うスペリング・ビー大会で勝ち抜く子は、家で毎日何時間も辞書と向き合う。トップアスリートを入団させなくても、なぜか粘り勝ちする強いアメフトのチームがある。
ダックワースはそこにGRITという共通項を見つけ、定義づけた。本書中にある「GRITテスト」を受けてみれば誰もが自分にどれだけのGRITがあるのか、誰しもが納得できる結果が得られるだろう。
彼女は、自分の人生においてもこのGRITを目的として掲げており、もしお洒落タトゥーを入れるなら、日本のことわざである「七転八起」を入れたいとまで書いている。
この本では多くの例を引き合いに、GRITがどれだけ大切かが分析されているが、どうやったらそれが身につくのか、簡単な答えは提示されていない。もちろん「みんなでやり抜こう」とする環境を整える、という答えはあるが、GRITのある子どもを育てるには、まず親が手本を示すことであり、職場ではみんなで目標を常に意識し、チームメンバーの結束を促すことだ、とダックワースはハッパをかけてくる。
彼女が「グリット・パラゴン」と呼ぶ成功者たちは皆、努力家であり、努力することをむしろ楽しめる人たちなのだと。
無名のダンサーのエピソードからアマゾンCEOのジェフ・ベゾスまで、GRITを判断基準にすると、至極当たり前のことであっても、はっきりとその重要性が見えてくる。今年5月にアメリカで刊行になって以来、ダックワースは優秀な人材を見極めたい企業や、スポーツチーム、教育団体から引っ張りだこだ。
大統領になるのは、よりGRITのある候補
この秋、大統領になるのは、よりGRITのある候補の方だろう。夫のビル・クリントンほど、天性のカリスマもなければ、スピーチの才能もない。最初からトップ政治家への野心があったわけではない。
だが、ビルが見初めたクラスメートのヒラリー・ロダムは、大学生の頃からコツコツと図書館で勉強し、弁護士の資格を取り、子どもや社会的弱者のための非営利団体に勤めた。夫の政治的野心のために弁護士としてのキャリアは諦めたが、ファーストレディとして、90年代に皆保険改革に取り組んだ。
夫の下半身スキャンダルにも耐え抜き、夫婦であることを止めなかった。ホワイトハウスを出てからはニューヨークの上院議員として当選し、予備選で負けた相手のために国務長官として尽くした。
そして更に今、大統領としてアメリカを率いようとしている。何がヒラリーをリーダーたらしめるのか、それはGRITという言葉がいちばん相応しい。