特に、新興国の病院では子どもの誘拐事件はザラである。以前に訪れたインドネシアの病院では、「子どもを探してください」という張り紙が貼られていた。病院内での新生児の誘拐は、決して珍しいことではない。

 これは極端な例としても、先進国においてもセキュリティ対策が取られている。

 例えば、シンガポールのタントクセン病院(Tan Tock Seng Hospital)を見てみよう。この病院はシンガポールで2番目の規模と170年の歴史を持つ政府系病院で、病床数は1500床。45の診療科のほか、脳や心臓などの16の専門センターを持ち従業員が8000人もいる巨大病院である。

シンガポールのタントクセン病院には、入退出をチェックするゲートがある

 写真は、この病院の入り口である。入退出をチェックするゲートがあり、入館証がないと、誰も入ることができない。

 日本の病院を見慣れた方にとってはかなり違和感があるであろう。

 しかし、よくよく考えてみれば、日本においても、企業や官庁では、このようなセキュリティチェックはおなじみの光景だ。単に考え方を変えれば良いのではないだろうか。

ソウルの産科の大病院には
子ども誘拐防止のアラーム設備が設置

 ソウルでは、「ビッグ5」と呼ばれる1000床以上のベッドを持つ巨大病院が最先端医療を行い、それらを中心に患者争奪戦が激化している。ビッグ5とは、サムスン病院、セブランス病院、ソウル国立大学病院、アサン病院と、カトリック系の聖母病院である。

 しかし、ほかの病院も努力している。例えば、病院の国際認証規格であるJCI(joint commission international)認証を取得している点では、ソウルには高麗大学病院、イナ大学病院、そして梨花大学病院がある。梨花大学病院でも韓国のJCI取得病院の常で、玄関先には大きなJCIのマークがあり、一方では、韓国の病院認証のマークが飾ってあった。

韓国・梨花大学病院に掲げてあるJCIマーク

 梨花大学病院は、病床数は769、ICUが54(新生児用を除く)、手術室は15、出産室が10、透析病床が24といった規模である。

 競争環境が激しいために、大学病院といえども得意分野を明確にしている。この病院の場合には「女性に対する医療」ということである。つまりこの病院の特色は、女性にフォーカスしているところである。

韓国・梨花大学病院の子ども誘拐防止のためのアラーム設備

 産科病棟にはJCIの指示もあってであろう、子ども誘拐防止のアラーム設備があったのには驚かされた。

 日本人は均質性の高い社会で、国や周りの安全に対して自信を持っていた。ましてや、かつては「聖域」とされた病院内で事件が起きるとは考えられない、というのが本音かもしれない。

 しかし、時代は変わった、海外からの不法滞在者も増えたし、日本人の価値観も多様化した。海外の病院セキュリティへの考えをある程度は見習い、取り入れていかなければならないであろう。