マッキンゼーで通用する人、しない人
瀧本 僕とマッキンゼーの出会いはアルバイトだったのですが、当時はマッキンゼーのこともほとんど知らないまま「5日間で8万円もらえるバイトがあるぞ」と飛びついただけでした。マッキンゼーはもちろん、コンサルタントという仕事にも何の興味もなかった。おそらく山梨さんたちは、そういう人間を意識的に選んでいたのではないでしょうか?
山梨 一方で2000年代に入ってからは、商社やメガバンク、テレビ局なんかと一緒にマッキンゼーを志望してくる求職者が増えてきたんですよ。要するに、ブランド志向の秀才たちが、マッキンゼーの門を叩くようになった。
瀧本 ああー。
山梨 リクルーティングの人間たちと「これはまずいぞ」という話になりましたね。瀧本さんみたいな、いい意味での変人が少なくなった。
瀧本 (笑)。
山梨 みんな能力は高いんですよ。でも、人間としてのユニークさを見極めないと、ただの「優秀なコンサルタント」になっちゃう。それだとマッキンゼーでは通用しない。
瀧本 そこを見抜くのはむずかしいでしょうね。
山梨 だから僕は、面接そのものはさっさと終わらせることにしていたんです。仮に1時間の予定でも、早いときには30分で終わっちゃう。それで最後に聞くんです。「では、以上で終了になりますが、なにか質問はありますか?」。
瀧本 なるほど。
山梨 つまり、「質問する力」ですね。「課題発見の力」と言い換えてもいいかもしれません。その人がどんなことに興味を持っていて、どんな問題意識を抱えているのか。長い時間だらだらと面接するよりも、ずっと正確な「その人」が見えてきますよ。
瀧本 少なくとも、そこでひとつも質問が出てこないような人は、マッキンゼーには向いてないでしょうね。
山梨 一発勝負の面接だから、緊張していたり、考えすぎてしまったり、いろいろあるのはわかります。正解があるような問いかけではないし、質問をしなかったから不採用というわけでもない。でも、そこで質問が出てこない人、ここぞとばかりに疑問や提案をぶつけない人は、採用されたあとに苦労するでしょうね。