強まっていく生産性上昇の要請
サービス業は理想的な「雇用の受け皿」か?
高齢化する日本経済にとって、経済成長戦略はことのほか重要な政策である。日本が成長しなければ、勤労者の所得増によって高齢者の社会保障負担を賄うことができないからである。
本稿では、成長戦略を立てるときに見誤りやすい罠があることを指摘したい。それはサービス業を雇用拡大の受け皿と考えて、そこに雇用を集めるだけでは逆効果になる可能性があることである。
サービス業は他業種に比べて、1人当たり所得が低く、低生産性である。生産性を高めにくいから、就業者の賃金上昇が鈍いという性格もある。
確かに、現状、サービス業は全業種中で雇用拡大に大きく寄与する数少ない業種である。失業対策として、雇用の伸びが期待できるサービス業への雇用シフトは歓迎されやすい。
しかし、過去のデータを調べると、就業者が生産性の低いサービス業に集まった結果、就業者全体の平均的な生産性は低位に抑えられることとなった(図表1参照)。
サービス業の1人当たり生産性は654万円と、産業平均の926万円よりも3割方低い(2009年平均)。その一方で、2000年から2009年にかけて、サービス業の就業者の割合は28.9%から35.7%へと高まっている。
経済学者やエコノミストの常套句に、「低生産性部門に資源配分が固定化される」という批判の言葉があるが、サービス化の流れは、文字通り、低生産性部門への労働力の固定化に見える。