少子化による総人口の減少が、日本経済停滞の原因であると言われる。

 しかし、総人口の動きと日本経済の動向との間には、あまり明確な関係が見られない。

 【図表2】に示すように、日本の総人口は、1990年代末までは、0.2%を超える年率で増加し続けていた。しかし、日本経済はすでに90年代の初めから頭打ちになり、後半には停滞がはっきりしていたのである。だから、日本経済停滞の原因が総人口の動向にあるとは言い難い。

 総人口が2008年から減少に転じたのは事実である。しかし、減少率は、年率では0.1%程度と、絶対値ではかなり小さな値だ。

 しかし、特定年齢階級の人口推移を見ると、経済活動との関連が強い階層が見られる。それは、40-59歳層だ。その年齢階層の人口増加率を、総人口増加率とともに【図表3】に示す。

 40-59歳層の人口増加率が1985、86年に落ち込んでいるのは、戦時期に出生率が急減したことの影響である。これを除いて考えれば、80年代前半には年率2%台後半の率で増加していたのだが、90年代に入ってから伸び率が低下したということができる。これは、日本経済の盛衰とほぼ同じ動きである。そして、90年代後半から伸び率がマイナスに転じた。2007年からは年率1%を超える減少を示している。

 40-59歳層の人口を実数で見ると、1995年に3654万人だったのが、2009年には3328万人と、約1割減少した。総人口はこの間に1億2557万人から1億2751万人へと、むしろ増えていることに注意が必要である。

 このように、経済活動に影響していると考えられるのは、総人口の変化よりも、40-59歳層の人口動向だと考えられる。