株を保有しているだけで儲かってしまうタイミングとは

 しかし、実は、このうねりのタイミングをマスターするだけでは、まだ完全とはいえません。株には「循環」という、もうひとつのタイミングがあるからです。

 それをわかりやすく伝えるために、私の会社の社員の話をしましょう。

 私の会社では、やる気がある社員に、株の売買を、経営者である私がみずから教えています。

 誰でも最初は、失敗がつきものです。そのため、まだ資金力の乏しい若いうちからはじめたほうが、経験を重ねることができるため、動かせる資金量が増えたときに有利になります。

 ですので、私の会社では、若いうちから株をはじめることを推奨しているのです。

 さて、そんな私の会社に、4年前から株取引をはじめた若手の幹部社員がいました。ある日、そんな彼が、ニコニコしながら社長室にやってきました。聞けば、「私が見込んだ日本瓦斯の株価が、今日で4倍になりました」といいます。

 ノートパソコンをのぞくと、たしかに日本瓦斯のチャートは、彼が買ったところから急激に上昇していました。

 ガス事業の自由化、電力会社との事業提携など、優秀な経営陣による、業界の枠にとらわれない方針が市場に好感されて、大躍進の成長株に変貌を遂げていたのです。

 彼の眼力はたしかなものでした。しかし、この時期、ほかの銘柄はどうだったでしょうか?

 実は、2012年から2015年にかけてのタイミングというのは、東証1部2部にかかわらず、ほとんどすべての銘柄が、ひと握りの例外をのぞいて、軒並み急上昇した時期でもありました。

 例外といっても、倒産危機など、企業として価値を著しく低下させている銘柄ばかりです。

 途方もない借金を抱え、国有化も噂された東京電力(現・東京電力ホールディングス)でさえ、4倍近くにまで株価が上がっていました。

 このことからわかることがひとつだけあります。

 それは、株というのは、会社の実力や、投資家の経験に一切関係なく、保有しているだけで儲かってしまうタイミングがあるということです。

 これが、もうひとつのタイミング、景気や政治に左右される「循環」です。