男女のマッチングサービスにおける現在の主流は、いわゆる「プロファイリング」。会員の職業や出身地、星座や血液型などのほか、休日の過ごし方や結婚観などの価値観について30項目ほどに回答した結果をデータとして入力し、それを元にマッチングさせるというものだ。ところが、実際の男女の出会いの場では、相手のニオイや肌のきめの荒さなど、もっと動物的/生理的な直感がアリ・ナシの決定打になっているのが現実。そういう実際に生身の相手に会ってみないと分からないことが、運命の人選びを左右していると2人はセッションを展開していく。

写真左から、相澤さん、八木さん、祐川さん

八木「相手のニオイが嫌だというのは、優秀な子孫を残そうとする遺伝子的なレベルで合わないという証拠だから、子どもをつくりたいなら避けるべき。反対に、老後を一緒に過ごす相手を見つけたいなら、価値観の一致のほうが大切になるかもしれない。重要なのは、ユーザーが何を結婚の目的にしているかを見極めること。そして、このデータ化しにくいニオイや雰囲気をどう扱うのかが肝ですね」

相澤「データサイエンティストの皆さんには、ぜひこのニオイや肌のきめなどのノックアウトファクターについて分析してもらいたい。マーケティングの世界では、お客様にあった商品をリコメンドするキュレーションサービスが主流になっている。婚活の場でもスクリーニングではなく、キュレーションするくらいのものがほしい」

八木「心理学には‘選択のパラドックス’というものがある。選択肢が多過ぎると、間違った選択をしてはいけないという気持ちが働いて動きにくくなるという現象だ。運命の人探しでも同じことが言えるのでは。初期のデータや多くの情報を集めるのは重要だが、それをサービスとして提供する際には、たくさんの選択肢から運命の人を選んだ、理想の人だと思わせながらも、決めやすくしてあげる工夫が大切」

相澤「運命の人探しは‘人事制度’と似ている。数値化が難しいからこそ、どこまでいっても多少の不満は残るものだから。この人が運命の人だ、自分で選んだという公平性と納得性をどう演出するかが、カギになってくると思います」

 具体例や「身もふたもない」超現実的な婚活市場データを交えて、2人がアイデアソンの大きなヒントになるトークを展開すると、会場からは大きなうなずきや笑い声が響いた。

 次に登壇したのは、Googleのデベロッパーアドボケイト佐藤一憲氏。「Googleがめざす、誰もが使える機会学習」と題して、最新AIの技術的な情報提供が行われた。

 Googleが提供するオープンソースの人工知能ライブラリ「TensorFlow」は、音声検索から写真認識まで、コンピュータが人間と同じように学習を重ね、どんどん賢くなっていく人工知能・学習ソフトウェア。プレゼンでは、グーグル翻訳や画像認識に使われているこのAIを、他の分野に取り入れて成功している例を提示。

 例えば、スーパーコンピューターの冷却設備のコントロールに導入したところ電力が約15%も節約できた、農家でこれまで時間がかかっていた収穫後のきゅうりの仕分けをスピードアップできた、などの具体例を示しながら、運命の人探しのサービスを作るための具体的な機能紹介が行われた。

トップ・データサイエンティストが見守るなか
白熱するディスカッション

 後半戦はいよいよ参加者たちがアイデアを発表するアイデアソンだ。