政治休戦は仕方がないが
3月11日に発生した東北関東大震災は、現在も被害が拡大中で、出来る限り多くの被災者の一刻も早い救助が待たれる。また、広範囲にわたる地域が主に津波による壊滅的な被害を受けており、各地域及び住民の生活と経済の回復に向けた道のりは厳しく長いものになることが予想される。被災された方々には心よりお見舞いを申し上げたい。
現状では、災害対策、特に救命に関わる対策を最優先させる必要があることはいうまでもない。被害の発生から、政府は自衛隊に対して、当初は2万人、次に5万人、さらに10万人体制での出動を要請し(なぜ、最初から最大規模の指示でなかったのかは不明だが)、現在、自衛隊を中心に救助活動が継続中だ。
この事態の発生を受けて、与野党の対立が続き、険しい局面にあった国内政治は「政治休戦」的な状態に移行した。
現状では、首相や閣僚の政治資金問題や各種の不始末を非難することよりも、災害支援に関して政府が有効な行動を指揮することが重要なので、政治休戦自体は妥当な判断だ。自民党をはじめとする野党が速やかにこうした判断に至ったことは高く評価できる。
但し、大災害が発生したからといって、これまでの問題が自然に解決するわけでもないし、重要性を失うわけではない。行政の停滞を招くような政治的駆け引きは慎むべきだが、問題の所在を忘れないことと、地震災害の陰に隠れて、不適切な処置が行われることがないように、地震関連以外の問題に注意を払うことも重要だ。
軍隊の活動に譬えると、主戦場以外の、後方その他の死角になりやすい方面に見張りが必要なことと同様であり、被災地域の復興が今後長期間に及ぶことを考えると、災害関連以外の問題の適切な処理は被災地への支援にも関わる問題だ。
この点で印象的だったのは、国会の扱いを巡る渡辺喜美みんなの党代表の発言だった。渡辺代表は、こういう時には、官僚が勝手なことをやりかねないので、国会を開いた状態で維持して、政治家が政府の動きをチェックすることが重要だ、という趣旨を述べて、国会の一時閉会に反対した。言葉にトゲがあるが、内容は妥当だ。
被災者の「救命」に大きなウェイトがある向こう一、二週間の適当な時期を区切りとして、震災の復興と他の政治・経済問題を切り離し、政治を再開することも重要だ。