今回の震災の影響を把握しにくい背景として、「多極化」がキーワードとして挙げられる。たとえば、国内の実物経済への影響だけでも、建物被害はもちろん、ライフラインの寸断、計画停電・自主節電、原子力発電のあり方など、考慮すべき点が多い(図表1参照)。

 対外的な金融では、海外保有資産の円への還流(リパトリ)を見込む形で円高が急進し、協調介入に至っている。津波などの影響で被害そのものが把握しにくいことに加えて、影響の表れ方が多極化していることも、全体像の把握を難しくしている。

阪神淡路大震災の被害と比べると?

 今回の震災の被害状況を阪神淡路大震災(1995年1月17日)と比べてみよう(図表2参照)。阪神淡路大震災の特徴は、人的被害は言うまでもないが、建物被害の大きさがとりわけ凄まじかったことだ。たとえば、全壊、半壊、一部損壊を合わせると、実に63万9684棟が被害を受けた。

 一方、3月22日9:00時点での警察庁発表によると、今回の建物被害は全壊、半壊、一部損壊合わせて12万1288戸となっている。これに対して、死亡と行方不明を合わせた人的被害は2万1592人と、阪神淡路大震災の6437人の3倍を超えている。しかも、この数値自体、今後さらに膨らむ可能性がある。

今回の震災の経済的コスト
本稿で考慮する「4つのポイント」

 震災の経済的コストを試算するに当たって、本稿で考慮した要因は(1)地震と津波、(2)計画停電や自主節電、(3)原子力発電に関わる問題、(4)株価の急落の4点。むろん、これで全ての要因を考慮したことにはならない。しかし、現時点で、ある程度数値的な扱いが可能な要因としてこれら4点に注目する。