人手をかけて本社から現場への情報発信のサポートをしているというと、システム化が遅れた会社かと思う方もいるだろう。しかし、前回に続いて取り上げる三菱東京UFJ銀行は、先行例として注目できる大組織だ。

 今回は、同行の法人部門における情報流通改革を紹介しよう。これは全行規模のものではなく、あくまでも法人部門におけるパイロット的な取り組みだが、ユーザー視点に転換した第一ステップに続く、人の力を組み合わせた第二ステップとなる有効な企てとして評価したい。

 三菱東京UFJ銀行で今年新設されたナレッジ・コミュニケーション・センター(KCC)は、数名が人の力で情報を整理している。いわば情報システムと「ヒトのチカラ」の新結合だ。これにより、本部横断的なコーディネーションと本部と現場の断絶の解消を図り、現場の効率的な情報活用へとつなげている。

 本社からの情報発信を、押し付けでなく現場に適合した実効性のあるものにしようという三菱東京UFJ銀行の取り組みは、まさに人を中心に置いた発想であり、ユニークにして現実的だ。

変化の波をかぶる現場を
組織的にサポートする

 この数年で、本部から法人営業に対しての1日あたりの情報配信は、60~80通と以前の数倍になっていた。金融ビッグバンによる取り扱い商品の増加と、金融商品取引法の施行による事務手続の複雑化という二つの要因によって、本部から現場に発信される情報量が急増したのだ。しかし、営業がそんなに時間を割けるわけもなく、情報は大量に発信されるが、必要なものでも現場が使っていないという状況に陥った。

 取り組んでいた社内ウェブによるコミュニケーション改善も合併で中断し、システムは整ったが運用がまだまだという状況だった。しかし、顧客と接する現場が環境変化の波をかぶり、情報洪水で困っている。そこで組織的に情報の分野で現場をサポートしようということになったのである。