日本は大変な試練に晒されている。その試練はあまりに巨大で全容すら見えていない。とても将来が見通せる段階にはない。それでも、経済活動は脈々と続いているし、しっかりと維持することが復旧にも貢献するはずだ。
金融市場も同様である。市場機能を維持し続けることが、国内では復旧に必要な資金を供給するほか、海外には日本市場の健全性を示し、ひいては経済の早期安定に貢献する。本稿では、東日本大震災が経済・金融市場に与える影響について、改めて考察したい。
1.成長率に与える影響
今次東日本大震災が日本経済に与える影響に関しては、(1)主な被災地である東北の経済規模(全国の11.8%)、(2)全国の40%を管轄する東京電力の電力不足(25%)、(3)企業マインドや家計マインドに与える悪影響、などを総合的に勘案して、実質GDPを5%程度下押しすると見積もった。リーマンショック後のインパクト(実質GDP比10%)と比べると約半分に相当する。
もちろん、原子力発電所のトラブルが深刻化する場合、短期的なインパクトがさらに膨らんで行く可能性も否定できない。また、現在の電力や物流面でのボトルネックが続く場合、復旧に要する時間も長期化することになる。既述のメインシナリオは、あくまで適切な政策対応などから早期にボトルネックが解消されるケースであり、想定され得るベストシナリオと言っても良いだろう。