世界を席巻する「収穫逓増」企業

坪井賢一(つぼい・けんいち)ダイヤモンド社取締役、論説委員。
1954年生まれ、早稲田大学政治経済学部卒業。78年にダイヤモンド社入社。「週刊ダイヤモンド」編集部に配属後、初めて経済学の専門書を読み始める。編集長などを経て現職。桐蔭横浜大学非常勤講師、早稲田大学政治経済学部招聘講師。主な著書に『複雑系の選択』(共著、1997年)、『めちゃくちゃわかるよ!金融』(2009年)、『改訂4版めちゃくちゃわかるよ!経済学』(2012年)、『これならわかるよ!経済思想史』(2015年)、『シュンペーターは何度でもよみがえる』(電子書籍、2016年)(以上ダイヤモンド社刊)など。 最新刊は『会社に入る前に知っておきたい これだけ経済学』

 21世紀に入ると、新興のアメリカIT企業が収穫逓増の法則に乗ってすさまじい勢いで成長していく。

 仕事ではパソコンを使うが、日常的にはスマホやタブレットなど、モバイルが現在は主流だ。モバイルのOSは、2016年時点でアップルのiOSとグーグルのアンドロイドが市場を二分している(国によってシェアはだいぶ違うが、日本ではほぼ二分)。

 モバイル市場では、さまざまなアプリを供給する企業が収穫逓増を実現している。たとえば日本のSNSで知られるmixi(ミクシィ)は、SNS市場ではFacebookに敗れたものの、2013年10月に発売したスマホゲーム「モンスターストライク」の投入で急激に成長した。

 スマホゲームの追加生産要素(労働・資本)はほとんど増えない。課金は通信会社が行なう。ユーザーはダウンロードするだけだ。ヒットすればかんたんに収穫逓増になる。

 ミクシィの売上高(営業利益)は、2014年3月期で122億円(5億円)と中堅企業並みだったが、「モンスターストライク」のヒットが始まった結果、2015年3月期には1129億円(527億円)と、売上で9.3倍、営業利益で105倍(!)と、絵に描いたような収穫逓増となった。2016年3月期は2088億円(950億円)とさらに増えているが、そろそろ収穫逓増のカーブは収穫逓減に移ろうとしている。

 こうした収穫逓増企業は、次の段階へ進むため、蓄積した資本をもとにしてM&Aを行ない、事業を拡大させる。ミクシィもネット企業をさかんに買収している。