「間接金融から直接金融へ、というと、企業がお金を調達する場所をイメージする人も少なくないんですが、実はそれだけではないんです。国がリスクを取ることから、企業や個人がリスクを取ることへ、という変化なんです」

ダイナミックにお金が動く国に変わった
アメリカ

 当時のアメリカの問題は、いかに効率的に有効にお金を使うか、ということだった。それを考えたとき、間接金融によって特定の一部の誰かがそれを決めていくのでは、もはや限界が来る、とアメリカは判断した。

 「特定の一部の誰かが決めるのではなく、マーケットにたくさんのお金の出し手を入れ、その総意によって、引っ張っていく産業を決めればいい。それが国としてのリスクを回避できる方法だ、とアメリカは気づいたんです」

 これは資産運用の観点から見れば、リスクを細分化し、企業や個人がリスクを取りやすくした、と言い換えてもいいかもしれない。そうすることで、個人がリターンも取れるようにしたのだ。

 だが、そうなれば、個人がリスクに立ち向かうための準備が必要になる。ツールであり、仕組みであり、情報や教育が必要になる。アメリカでは、新しいタイプの証券会社ができるなど、その動きが急速に進んでいたことを、松本さんは知る。

 1970年代から80年代にかけて、アメリカは厳しい低迷の時代にあった。だが、1990年代以降、イノベーティブな国として生まれ変わる。インターネット産業をはじめ次々と新しい産業が生まれ、そうした産業にダイナミックに資金が流れ込み、世界的な産業へと育て上げられていった。