では、変えられなかった結果、今はどうなってしまったのか。リーマンショックは、世界中の株式市場を大混乱に陥れることになった。だが、危機の発祥地のアメリカよりも、株価が大きく下がったのが、実は日本だった。

 しかも、その急落ぶりは予想をはるかに超えたものとなり、多くの企業が「解散価値(企業が解散したとき、資産総額からすべての負債を支払った後に残った資産)」以下にまで株を売り込まれた。

 世界の専門家によって指摘されたのは、日本の株式市場の歪みである。多様な投資家が育っていない、つまり、多様なお金の出し手がいないために、相場が極端に振れてしまう。

 世界第2位の経済規模を誇る国、さらに1400兆円もの個人金融資産を誇る国でありながら、株式委託売買代金の五割強は、実は外国人投資家によっている。多様な意志や思いを持つ、多様な資金の出し手として期待される個人投資家は全体のわずか3割、というのが日本の現状である。

 日本の個人金融資産のうち、株式および出資金が占める割合は、今なお6.6パーセントしかない。アメリカの30.6パーセントと比べ、ほぼ5分の1。また投資信託も、拡大してきたとはいえ、日本ではわずか3.4パーセント。こちらもアメリカの11.8パーセントの約3分の1である。

 個人金融資産に占める株式・投資信託の割合は、金融自由化以降伸びているとは言えない。アメリカやドイツでは、リーマンショックによる激しい株価下落があったにもかかわらず、時系列で見ると伸びているのに、である。日本の「金融自由化」とはいったい何だったのか。

 多様なお金の出し手によって、お金の使い方が決められていく金融が、残念なことに日本では今なお極めて小さいままなのだ。

 一方で、郵便貯金しかり銀行預金しかり、自分以外の誰かにお金の使い道を決めてもらっている金融は、日本では実に全体の55.8パーセントにもなる。これは、アメリカの14.7パーセントの4倍近い割合である。

 そして、国の危機感も変わってしまった。政権が民主党に代わって初めての予算となった2010年度予算では、一般会計総額が92.3兆円と過去最大の規模となった。しかも、税収見通しが37.4兆円と前年度当初比で18.9パーセントもの大幅減となる一方、新規国債発行額は44.3兆円と過去最大となった。当初予算段階で、戦後初めて借金が税収を上回るという極めて厳しい事態である。国債=国の借金は増発され続け、それを銀行や郵便貯金が空前のスケールで引き受け続けている。