株価が急落し破綻懸念が高まったシティグループ。米国政府は市場から追い立てられるように救済策を打ち出した。破綻は回避されたものの、まだ多くの火種を抱える同社の前途は暗いままだ。今後、ほかにも危機に瀕する金融機関が出てくるのは避けられない。金融危機解消の道筋はいまだ見えない。
リーマンショックを超える悪夢はとりあえず回避された。
11月23日深夜、米国財務省、FRB(米連邦準備制度理事会)、米連邦預金保険公社(FDIC)の三者は、シティグループの救済策を発表した。
すでにシティは10月15日、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカなど大手行とともに250億ドルの公的資金注入を受け入れていた。
しかし、9月末で196億ドルと同業他社に比べて群を抜く多額のサブプライムローン関連資産を保有するシティに対して、市場は疑いの目を向けるのをやめなかった。それは、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドが同業のJPモルガンやバンク・オブ・アメリカに比べ高水準で推移していたことからも明らかだ。
10月15日に16.03ドルだった株価はその後急落する。11月21日に3.77ドルにまで下落した。株価が急落し破綻に追い込まれたリーマン・ブラザーズ同様、救済策が打ち出されなければ破綻は不可避だった。
シティを破綻させない
意思は明確に示された
救済策の骨子は以下の4つだ。
1番目は、200億ドルに及ぶ追加の公的資金注入。2番目は、シティが抱える3060億ドルの不良資産に対する政府保証。当初の290億ドルの損失はシティが負担するが、それ以上の損失については、90%を米政府、残り10%をシティが負担する。
3番目に、シティが政府に対する保証料として優先株70億ドルを発行し27億ドルの新株引受権を割り当てる。そして4番目に役員報酬について政府の承認を受けることが義務づけられ、かつ向こう3年間、救済側の三者の承諾なしに1セント以上の配当ができないという制約を受けることだ。
この救済策で「米政府がシティを破綻させないことははっきりした」(藤岡宏明・大和証券SMBC金融市場調査部次長)。