非認知スキルが高い子どものほうが
勉強ができ、出世もする

脳科学的にも『伝え方が9割』?!<br />中野信子×佐々木圭一(前編)佐々木圭一(ささき・けいいち)コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト: www.ugokasu.co.jp www.facebook.com/k1countryfree
Twitter: @keiichisasaki

中野 自分の感情を抑制して、ちょっと立ち止まって相手の頭の中を想像してものを言おう…ということを、『伝え方が9割』ではおっしゃっていますよね。これがまさに非認知スキルであり、そういう力を子どもの頃に身につけさせてあげることが財産になると言われています。抑制する力はとても大切で……佐々木さん、マシュマロ実験ってご存じですか?

佐々木 はい。でも改めて、教えていただけますか?

中野 自身の欲求を少し抑制すると、もっと大きな得になって返ってくるという実験です。子どもの前に、お菓子が載ったお皿を置いて、「15分経ったら戻ってくるよ。食べたくなったらブザーを押して食べてもいいよ。でも、15分経ってそのままお菓子が残っていたら、もう1皿あげる」と言い残して部屋から出ていくんです。すると、たいていの子はボタンを押して食べてしまうのですが、押さずに我慢する子もいるんです。2倍の量がほしいから、お皿を机の下に隠したり、敢えて見ないようにしたりして、工夫しながら15分やり過ごす。そういう子が、3割ぐらいいます。

佐々木 へー!何歳ぐらいの子どもなんですか?

中野 4歳です。そして、その子どもたちが成長して18歳になったとき、我慢できた子と、我慢できなかった子の成績を比べてみると、我慢できた子のほうが成績がいいんですね。

佐々木 へええ。なぜそうなるのですか?

中野 「我慢できる力」というのは、漫画を読んだり、ゲームをしたり、友達と遊んだりしたいけれど、後々のためにちゃんと勉強をしようと思える…というような、適切に自分の行動を管理できる能力なんですね。実験対象となった子どもの追跡調査は、44歳まで行われたのですが、44歳時点での社会経済的地位を比べると、我慢できた子のほうが地位が高いんです。

佐々木 4歳の時点で、そこまでの差ができてしまっているということなんですね。そして、この「自分の思ったまま行動するのではなく、我慢できる力」が、「非認知スキル」であると。

中野 そうです。この実験は、「生まれつき抑制のできる子どものほうが学歴もよくなるし、稼ぎもよくなるということは、生まれながらに格差があるのか」と捉えることもできますが、子どものうちにこのスキルをつけてあげればいい、と考えることもできます。

佐々木 そうですね。