「より多く」のことを「より速く」成し遂げる

 2012年に初めてGVでスプリントを行ってからいままで、調整と実験を重ねてきた。当初、迅速なプロトタイプ作成と顧客調査は、量産品にしか通用しないだろうと考えていた。医療や金融のような分野の専門家が、そんなにすばやく行動できるだろうか?

 だが意外にも、5日間のプロセスはもちこたえた。投資家から農家、がん専門医、中小企業経営者までの多様なクライアントの役に立った。ウェブサイトやiPhoneアプリ、紙の検査報告書、ハイテク機器にも有効だった。

 製品開発だけじゃない。優先順位づけやマーケティング戦略、社名決定にもスプリントを利用した。そしてスプリントを行うチームが一体感を高め、アイデアを次々とかたちにするのを、何度となく目の当たりにしてきた。

 僕らのチームはここ数年間で、業務プロセスに関するアイデアを試行、実証するまたとない機会に恵まれている。GVの投資先のスタートアップとのべ100回を超えるスプリントを行っているほか、アン・ウォジツキ(遺伝子検査企業23andMeの創業者でセルゲイ・ブリンの妻)やエヴァン・ウィリアムズ(ツイッターなどの創業者、連続起業家)、チャド・ハーリーとスティーブ・チェン(YouTubeの共同創業者)など、きら星のような起業家たちとの仕事からも多くを学んだ。

 僕が最初にめざしたのは、職場で過ごす時間を効率的で有意義なものにすること、本当に大事なことに集中して、自分のため、チームのため、顧客のために時間を有益に使うことだ。

 あれから10年以上たったが、スプリントのプロセスはこの目標を達成するのにいまも役立っている。この方法をこれからあなたと分かち合えるのが嬉しい。

 あなたは大胆なビジョンのもとに、いまの仕事を選んだ。

 そしてそのビジョンを―メッセージであれ、サービスであれ、経験、ソフトウェア、ハードウェア、またこの本のようなストーリーやアイデアであれ―世界に伝えたいと思っている。

 だがビジョンを実現するのは簡単なことじゃない。雑事に追われ、ひっきりなしのメールに気をとられ、うっかり締切を逃し、会議で1日を無駄にし、疑わしい前提をもとに長期プロジェクトを進めがちだ。

 そんな現状に甘んじることはない。スプリントは大きな問題を解決し、新しいアイデアを試し、より多くのことをより速く成し遂げる道筋になる。しかもいまより楽しく仕事ができるときたら、試さない理由は何もない。

 それじゃ、始めよう。

ジェイク・ナップ他著、櫻井祐子訳『SPRINT 最速仕事術』(ダイヤモンド社刊)より)