シルクロードの町、甘粛省蘭州市を訪ねた。飛行機の翼の下に無数の黄色いはげ山が延々と続き、裸の山肌が貧困を訴えていると感じた。山々の中を蛇行する川床には水がなく、砂地が鈍い白さを見せている。たまにゴマ粒のような緑の点が現れるが、それは人々が黄色い大地にへばり付いて暮らす町か村だろう。空から見た黄土高原である。

 約30年前、はじめて飛行機の上からこの荒涼とした大地を見下ろした時、そして2年前に再度訪問した時と同じように、黄土高原のこの厳しい自然を目の当たりにして思わず息をのんだ。

 黄河上流にある蘭州市は帯状盆地の特徴を持ち、東西に細長く、北と南には山がそびえ、市内北部の九州山のふもとを黄河が流れている。黄河流域で黄河の本流が市内を流れる唯一の省都として、同市は独特の都市景観をなしている。

 車が地元の名門大学蘭州大学の前で止まり、降りると小雨が降っていた。水資源が極端に少ない西北地域にある蘭州市は、その水資源も全国平均を下回っている。遅い春雨となるが、人々は雨が降ったことを喜んでいる。水の供給という視点から見れば、蘭州は西北地域では恵まれていると言えるだろう。市内を流れる黄河とその支流の湟水や大通河の存在で、同市内に流れ込む水量は比較的豊富で、水量も安定している。しかも、寒い時期でも凍結せず、含砂量も比較的少なく、農工業用水及び生活用水の需要を一応は満たしている。

 荷物を大学側が用意してくれたホテルの客室に放り込むと、町に出た。出張先に到着したら、自分の肌でその町の空気と風土を感じたいので町じゅうをできるだけ歩くことを習慣としてきた。今回も宿泊先のホテルから蘭州駅まで歩いてみた。布団などが入っている大きな荷物を背負って町を歩いていた「農民工」の2つのグループと出会った。この平々凡々な光景に妙に新鮮感を覚えた。

 4、5年前なら、沿海部のどの都市に行っても見られていたこの光景は、今や内陸部の奥深いところにでも行かなければ、なかなか見ることができなくなっている。人口大国の中国は次第に労働力不足に悩みはじめているのだ。