今夏、東京電力管内でかつてない電力不足が懸念されている。浜岡原発の停止によって中部電力からの送電も期待できなくなり、深刻さが高まっている。地球温暖化や将来的な資源リスクへの対処として節電意識が高まることは重要だ。しかし、度を過ぎた節電は熱中症などの健康被害を引き起こし、企業の生産活動にも悪影響を及ぼす。後者については、すでに、中国や東南アジアへのシフトが加速している。

電力不足対策に秘策なし
まずは対策の手順を適正化せよ

 政府は電力不足対策のために、当初25%、現在では15%の節電を呼びかけている。ただでさえ、夏の電力需要ピークに対して余力の少なかった東京電力管内の電力供給力が2割も下がったのだから、国を挙げての節電が必要なことはやむを得ない。しかし、現状の施策運営は少なくとも三つの点が不足している。以下、順次説明しよう。

 一つ目は、電力不足対策の手順が不明確なことである。電力不足対策に秘策はないが、同じ対策でも手順によって負担感はかなり変わってくる。

 電力不足対策には大きく分けて三つの方法がある。第1は供給力のアップ、第2は電力需要のピークが重ならないようにするピークシフト、第3は需要削減である。なお、この需要削減には省エネ型のエアコンを購入するような設備改善と、冷房の温度を調整するような、いわゆる節電がある。東日本大震災発生以来、国民が多大な負担を負い、将来に向けた不安が募っている現状を鑑みれば、ストレスにつながりかねない節電に頼る割合は、できるだけ小さくすべきである。

 すでに、東京電力は供給力のアップのため、休止中の火力発電を稼動させ、素材産業などの大型自家発電などに支援を頼み、さらに降水量に発電量が左右される揚水発電に期待するなど、総動員体制で臨む構えだが、実は管内にはまだ供給能力がある。非常用発電を含む中型の自家発電設備である。

 日本総研の試算では、現在公表されている以外にも、東京電力管内には600万kW程度の自家発電が存在する。ただし、これらを動員するには、発電できる状態にあるか、発電を依頼するにあたり、燃料代をどのように補填するのか、などを1件1件確認しなくてはならない。