「噛み合わせが悪いと肩こりや腰痛が引き起こされる」と言われ始めたとき、この意見は様々な反論にさらされた。しかし現在は社会的に認められ、最初に主張した群馬県高崎市の「丸橋全人歯科」には様々な症状の患者が治療に訪れている。今回はそんな“噛み合わせのプロ”に、噛み合わせの悪さが全身に悪影響を及ぼす理由と、その対処法を聞いた。(フリージャーナリスト 夏目幸明)
噛むたびに、顔の筋肉が
ひっぱられている!
人間の頭の重みは、体重の10%程度で、ボーリングの球と同じくらいずっしり重い。人間はこれを骨格で支えている。背骨の上に頭が乗り、肩や首の力を抜いても倒れないのが「よい姿勢」だ。しかし姿勢が悪いと、人は頭の重みを筋肉で支えざるを得ない。この状態がずっと続くと、筋肉の過度な緊張により首や肩のこりを感じるようになる。
姿勢が悪くなる原因はいくつもある。たとえば「前傾姿勢でスマホやノートパソコンを見つづける」「常に鞄を片方の腕で持つ」などだ。丸橋全人歯科の亀井琢正医師が話す。
「そして、歯です。噛み合わせが悪いと、噛むたびに顔や首の筋肉があらぬ方向に引っ張られ、次第に体がゆがんでいくのです」
ここで読者に、簡単な「噛み合わせ診断法」をお伝えしたい。まず、立ってまっすぐ前を向き、あえてぽかーんと口をあけ、全身の力を抜く。そして、ゆっくりと口を閉じていく。最初に一部の歯だけがあたったら、その歯は「早期接触」している。
「左の図を見てください。早期接触している歯のせいで、歯がカチンとあたるたびに周囲の筋肉が少しずつ引っ張られ、体がゆがむ原因になるのです。実際に、軽く歯をあてたあと、グッと歯をくいしばると……早期接触の歯があった場合、片方の首の筋肉だけが引っ張られるのを実感できると思います。一方、歯列全体がカチンとあたる場合は、噛み合わせがいい状態です」(亀井医師)
こうして片方の筋肉だけが引っ張られると、頭の重心が乱れ、その重みを肩や首の筋肉で支えるためにこる。
それだけではない。慢性的な血行不良は手足のしびれの原因になる場合もあり、さらには痛みが人の心にも影響を及ぼし、鬱などの諸症状につながることもある。同歯科の名前を丸橋「全人」歯科と名付けた由来はここにある。まさに歯が全身状態に影響を及ぼしているのだ。