なぜ「巻き込み」は一人の力より成果につながるのか
何かを変革したり、困難なミッションを達成しようとするとき、現実の壁にぶつかることは多々あります。
そんなとき一人の力で突破しようとしても、最初から高いポジションにいる人ならまだしも、普通の社員には手の施しようがありません。
巻き込みとは、自分以外のメンバーを徐々に増やしながら、彼らに無理やりやらせるのではなく、彼らのモチベーションに火をつけながら、自発的に動いてもらうことを意味します。
誰もが当事者という意識を持てた瞬間、それは他の人の仕事ではなく、「自分の仕事」になるのです。
自分の仕事となったとき、人は喜んでそこに自己実現を見出し、自分で知恵を絞って行動するようになります。
やらされ仕事より自ら関わる仕事のほうが楽しいに決まっています。楽しい仕事には、誰もが進んでコミットしていくでしょう。
協力者が増えていけば、自分がプロジェクトを管理するというより、メンバーが自主的に動きだすので、一人で行う仕事よりはるかに大きな仕事ができるようになります。
自分の仕事のパフォーマンスを上げることも大切ですが、自分に欠けている視点やスキルを補うことは極めて困難です。
関わるメンバーの数、労働力の問題ではなく、一致団結して各人の強みを活かして精いっぱい努力するチームや企業のほうが、間違いなく強さがあります。
ユニクロは、これまで奇跡的なV字回復を果たし、不景気にも負けない強さを持ち得ていますが、それは柳井さんの強力なリーダーシップはもちろん、組織として一致団結する力、つまり、「巻き込み力」をDNAとして持っているからなのです。
今の時代、グローバル競争の中で変化もスピードも速く、多様な国や企業とも仕事をしていかなければならない状況です。加えて、不景気から人員補強もままならない状態です。
そんなとき、お金も人も時間もないという限られたリソースの中で、企業が全社一丸、チームで働くためには、「巻き込み仕事術」が有効になってくるはずです。
※後編は、現場で共有されるユニクロ流「プロフェッショナルマネジャー」5つの条件について、ご紹介します。
田中雅子(たなか・まさこ)
静岡県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。イギリス留学を経て、慶應義塾大学大学院などを修了。LLM(法学修士)、MBA(経営学修士)。
株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)に経理部マネジャーとして入社。経理部や監査部所属にもかかわらず、周りを巻き込みながら数々の全社プロジェクトをゼロから一人で立ち上げマネジャーを兼任。ウイメンズのヒット商品が生まれる土壌となった「ダイバーシティ・プロジェクト」を立ち上げ、ユニクロⅤ字回復の一翼を担った。
その後、一部上場企業執行役員、子会社社長を経て独立。現在、田中総研代表。経営戦略、経営企画、ダイバーシティ、人材再生などの経営総合コンサルティングや企業研修、講演、執筆など幅広く活動している。
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