「99%無理なこと」がなぜ実現できたのか?
私がソフトバンクで働いていた頃も、孫社長がやると言い出すことは、社員全員が「99%無理」と思うものばかりでした。
実は私も、ADSL事業への参入が決まったときは大反対しました。どう計算しても、事業単体で利益が出るとは思えなかったからです。
ADSL事業を全国でこれほど大規模に展開することは、当時の常識ではとても考えられないことでした。なぜなら通信事業者にとって、ADSLは非常にやっかいなサービスだったからです。
使う場所や気象条件などの影響を受けやすく、通信速度が安定しにくいため、ユーザーから品質へのクレームが来ることは容易に想像できました。また、NTTの回線を借りてサービスを提供するため、全国を網羅するネットワークをつくり上げるにはNTTとの交渉を含めた膨大な手間と設備投資が必要となります。
つまり、「ADSL事業をやるか、やらないか」の議論を始めれば、「サービスの品質が安定しない」「クレームが来たら対応しきれない」「コストがかかりすぎる」など、いくらでもできない理由を挙げることができました。
では、無理を承知でADSL事業に参入した結果はどうだったか。
サービス開始を発表した3ヵ月間で、100万人の予約申し込みが殺到。2005年末には、「Yahoo! BB」の顧客は500万人を突破しました。
この大成功を見た他社も続々とADSL事業に参入し、日本は世界有数のブロードバンド大国へと成長を遂げました。わずか数年で、ADSLは通信業界のメインストリームにのし上がったのです。