肥満は見た目が格好悪いだけ、と侮ってはいけない。正常な体重の人に比べ余命が10年以上短いという研究もある米国では、手術という方法で治療を受ける人も多い。日本でも低侵襲な方法で減量手術を受けられる医療機関が登場してきた。「肥満に手術」、はたしてその効果のほどは。
ダイエットに無縁だった中年男性でも、肥満やおなか周りを気にする人が増えてきている。その一つのきかっけになったのが、2008年に始まったいわゆるメタボ健診(糖尿病などの生活習慣病に関する健康診査)だ。
肥満は見た目が格好悪いだけ、と侮ってはいけない。「肥満症では、糖尿病や高血圧、高脂血症といったメタボリックシンドロームが悪化する。そうなれば、それが心疾患や脳卒中の引き金に。肥満は軽視されがちだが、実は命に関わる“疾病”だ」。そう指摘するのは、四谷メディカルキューブの減量外科、笠間和典部長。
20歳でBMI*が45の人は同年齢の正常な体重の人より余命が13年短いという米国のデータもある。
* BMI(体格指数:Body Mass Index) = 体重[kg] ÷ 身長[m] ÷ 身長[m] 25以上30未満は肥満、30以上は高度肥満。
肥満の多くは、食事制限や運動療法で改善できるが、そうした生やさしいやり方では、もはや体重のコントロールができない高度な肥満もある。
そうしたケースで有効なのが、手術。手術には、バイパス手術や、胃上部をバンドで締め付けるラップバンド手術、胃の一部を切り取る手術など様々なものがあり、米国では年間23万件以上が行われているという。
その中でも、現在日本で多く行われているのが、「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」という手術だ。これは、図のように、胃の大半、8割ほどを切り取り、バナナ1本分ぐらいの大きさにして、食事の摂取量を制限する手術。この手術により、少量の食事で満腹感を感じるようになり、減量効果が上がる。
出典:四谷メディカルキューブ
四谷メディカルキューブでは、BMI35以上の人、あるいはBMI32以上で糖尿病や高脂血症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群などの肥満による疾患がある人を対象に、この手術を行っている。2011年3月22日現在で、この手術を受けた人は104人。30~40代の患者が多く、4割弱が男性だ。