3月11日に東北を中心に起こった東日本大震災。今も多くの方が、苦しい生活を強いられている。一般市民である我々も何らかの形で、義援金・支援物資の送付などを行なって、少しでも被災者方の役に立ちたいと願っている。
しかしながら、こうしたボランティア活動の陰で、震災に乗じて被災者や関係者を装い、詐欺行為を行なっているグループがいることを知って欲しい。国民生活センターには、こうした詐欺行為に関する問い合わせや苦情が多数寄せられている。その中から例を挙げてご紹介しよう。
出会い系サイトのスパムメールは、誰しもが受け取った経験があるだろう。出会い系サイトばかりでなく、出会い系SNSなるものに勝手に登録されている場合も多い。今回ご紹介する詐欺には、こうしたスパムメールによる類のものが多く見受けられる。
「地震関連情報はこちらのURLをクリックして下さい」と書かれたメールが送付されれば、地震情報のメールと勘違いしてURLをクリックしてしまうこともあるだろう。
しかし、このURLをクリックすると出会い系サイトへ誘導され、「利用した」として利用料を請求されるという酷い事例がある。もちろん、そんな請求が来ても入金する必要性など全くもってないのだが、自らがURLをクリックしたという行為は事実であり、そこに詐欺師の付け入る隙があるというわけだ。
ネット詐欺に慣れていない人にとっては十分に脅威だし、「利用料」を支払ってしまうこともあるかもしれない。一度支払ってしまえば、相手側はどんどん同じような手口で請求をしてくるだろうし、他社にメールアドレスや個人情報を転売されて増殖していく可能性すらある。
今ご紹介したようなスパムメールが届いてしまい、利用料の請求が来ても決して支払ってはならない。無視するか、すぐにでも国民生活センターや消費者センターに届けて相談することが大切である。
次にご紹介するのは、震災被災者の名を騙り、「義援金を振り込んで欲しい」というメールを送付してくるというもの。
行政自体が被災している関係もあり、義援金が全ての被災者の方にうまく配付されておらず、現金がなく本当に困っている人も多いと思う。しかし冷静に考えてみれば、一個人が見知らぬ相手に突然「義援金を振り込んで欲しい」と頼んでくることなど有り得るだろうか。被災者個人への支援の遅れという事態を悪用した、まさに「新手の振り込め詐欺」に他ならない。
「被災された人々の役に立つならば」と、優しい気持ちでついおカネを振り込んでしまうこともあるかもしれないが、先に紹介した出会い系サイト詐欺と同様に、「またお願いします」といったメールや、別の人間から同様に義援金を振り込んで欲しいというメールが届き続ける可能性すらある。絶対に振り込まないよう、十分に注意が必要だ。
義援金や寄付、ボランティア活動をされている方々の“光”の陰で、このような悪事を考えて実行している詐欺師たちは、被災された人々の気持ちなど考えもしないのだろうか。人とも思えぬ詐欺行為に心が痛まないのか。とても理解できない。それが人の光と影の部分であるならば、そういった悲しい現実を垣間見た気がして、切なくてならない。
(木村明夫/5時から作家塾(R))