ミステリアスで英知あふれる老人との出会い。
その老人が教えてくれたのは「希望がある証」

――その老人があなたの人生を最終的に変えたのですね。当時彼は何歳だったのですか?

 年齢不詳で、実際に会うと80歳かな、あるいは180歳かなと思うような人です(笑)。町の人に何歳と思うかと聞いて回っても、「私が子どものときはもう老人だったよ」と答えるでしょう。永遠の老人というような人です。ただ、実在の人物ですよ。ですから、『希望をはこぶ人』の第1章は全部本当のことです。

原書『The Noticer』(写真左)と、日本語版(同右)。

――まさにそこに書かれた人だったのですね。

 そのとおりです。ミステリアスな老人ですが、英知あふれる人です。その老人こそが、私に自分について本当のことを教えてくれた最初の人でした。

 私がそう言うと、たいていの人は戸惑った顔をします。苦労している人に出会ったら、普通の人はどうするでしょうか。たいていはお金をあげるとか、何らかの方法で助けるとか、あるいは心配だと相手に伝える、といったところですよね。腰を下ろし、相手の癇にさわるようなことを言ったりはしないものです。でも、その老人がやったことはそういうことでした。実際、私を何回も怒らせましたよ。

 ただしだからといって、私には他に行き場もありません。なにせ桟橋の下に住んでいるんですからね。老人はそこで、私に「真実」――つまり、明らかに希望があるという真実を教えてくれました。ちょうど『希望をはこぶ人』の第6章で、謎の老人ジョーンズがウィロー・キャラウェイ(注:ウィローとは物語に登場する老婦の名前)に「希望がある証」を与えたのと同じようにね。

悲劇が襲ったときにこそ、
新たな希望を見出すチャンス。

――ご存知のように日本の東北地方は、大地震と津波で壊滅しました。何万人もの人が生活を奪われ、希望も奪われました。彼らは、もちろん人によって形はさまざまでしょうが希望を探しているのだと思います。そういう人たちはどういう物の見方をすればよいのでしょうか。どこで「希望がある証」を見つけることができると思いますか?

 そう、希望の形は人によって違います。でも常に忘れてはならないのは、こういう経験をしたことがある人が他にもいるということです。現時点では、世界的に見ても日本は顕著な例でしょうけれどね。

 6年前にはアメリカがハリケーンに襲われて、我々の家は壊滅的な被害を受けました。家を出ましたが、戻るまでには2年もかかりました。本当にひどいものでしたが、ひとつだけ常に忘れなかったことは、ハリケーンは我々の家を破壊したけれど、家庭を破壊することはなかったという事実。もちろん多くの命が失われましたが、まだ息づいている命もあるのだということです。