「願いを結んで 思いを結んで ひとを結んでお遍路さん 四国霊場八十八ヵ所 暑熱厳寒 山々踏みこえ 巡り巡ってうれしや上がり三カ寺 嗚呼生きててよかったと 幸せ味わう創作和菓子 呼ばれたし名は大結願」

 最初にこの名前を発表したとき、すかさず土産物屋の店主から、「長すぎて何と呼べばいいのかわからない」と声があがった。その心配も当然である。

 そこで、通称を「大結願」とした。半年前なら、こんな風変わりな名前は、議論のテーブルに乗ることなく却下されていただろう。

食べて終わり、にならないための、もう一工夫

 買って終わり、食べて終わりの、従来の土産菓子から脱却すべく、お遍路にちなんだ工夫をさらに加えることにした。その一つが「代わり参り」の仕組みである。

 香川県西部には、「こんぴらさん」で有名な金刀比羅宮(ことひらぐう)がある。江戸時代から庶民の憧れだが、旅路は長く、そう簡単には行けない。そこで、願い事を書いた木札と食料や賽銭を入れた黄色い風呂敷を飼い犬の首に巻き、代参させる「こんぴら狗(いぬ)」という風習があった。

凍った雪の上を歩くときは、靴に藁を巻きつけ、杖にしがみついた(撮影:岩城文雄)

 お遍路にも、代理参拝の習慣がある。そこで、「大結願」にもこの仕組みを取り入れた。土産菓子を受け取った人が、菓子箱の中のお札に願い事を書いて事務局に送ると、代わりに結願処の大窪寺に参拝してもらえる、というものだ。

 永峰指導員と私で始めたお遍路も、いわば代わり参りである。夏の盛りから雪の積もる真冬まで、約半年かかった行程をホームページYouTubeで公開し、お遍路気分を味わっていただけるようにした。