クオリティが高く、ぜいたくで快適で、未来的。ルマン24時間レースなどモータースポーツで活躍する一方、先進的安全技術やコネクティビティ技術に熱心に取り組んでいる。私たちにとってつねに気になるブランド、アウディ。自動車ジャーナリストがその魅力の本質に迫る。

アウディほどひとによって
印象の違うメーカーは珍しい

小川フミオ(以下O) アウディほど、ひとによって抱くイメージに多様性があるメーカーも珍しいかもしれません。

松本英雄(以下M) たしかに。ひとによってはモータースポーツでの活躍だったり、高級ブランドとしての存在感だったり。68年にデビューしたアウディ100は64年にダイムラーベンツ傘下からからフォルクスワーゲンに移管されるわけですけど、設計の思想は引き継がれた部分もありましたからね。堅牢でしっかりとした造りだったわけです。でも70年に造られたファストバックからVW製の部品に切り替わると徐々にバッジエンジニアリングの犠牲になった感がありましたね。

O バッジエンジニアリングとは中身は同じでブランドだけ違う製品づくりのことですね。

M 1954年と55年のグランプリで優勝するなどしたメルセデスの純レーシングマシンW196を作っていたエンジニアが60年代のアウディの土台を作りあげたわけです。

O つまり70年代は低迷の時期だったんですよね。

M でも後にフォルクスワーゲングループの会長(当時)になるドクター・フェルディナント・ピエヒがアウディ社長に就任。大きく変わります。ドクター・ピエヒ時代になってから発表されたアウディ車のおかげで、私はアウディというと作りのよさが強く印象に残っています。

O 内装デザインもすばらしいと思いましたね。当時のメルセデスは古い時代のよさをひきずっていましたが、アウディはすごくモダンでした。

機能主義的なレイアウトだけれど適度にエモーショナルで仕上げのクオリティが高いインテリア(写真のTT左ハンドルは欧州仕様)

M ちょっとマニアックな話ですが、私が感心したのはパワーウィンドウのスイッチです。押す強さで開閉量が微妙にコントロールできる。マニュアルの場合、回転式のレギュレーターを回して窓の開閉をやっていましたが、ゆっくり閉めたい時はゆっくり回す、あの感覚に忠実なんです。見過ごしがちな小さなスイッチですが、美は細部に宿るというか、細かいところを見過ごさないのが本当のクオリティだと感銘を受けました。