家庭でも職場でも、父性と母性の両方の愛が必要

坂東眞理子(ばんどう・まりこ) 昭和女子大学総長・理事長。1946年、富山県生まれ。東京大学卒業。1969年、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事等を経て、1998年、女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)。2001年、内閣府初代男女共同参画局長。2004年、昭和女子大学教授を経て、同大学女性文化研究所 所長、2007年より同大学学長(2016年3月まで)。2014年より理事長(学長兼務)、2016年に総長(理事長兼務)となる。著書に『女性の品格』(PHP新書)、『女性リーダー4.0』(毎日新聞出版)他、多数。

坂東 「お話をうかがっていて、堀江さんのすばらしいところは、自分と違った価値観の人でも切り捨てないところ。それは女性的なんじゃないかなと。ほめ言葉として女性的なんだなと思います」

堀江 「ありがとうございます。でも、はじめはそうではなかったところがあるんです。僕も、自分の考えに固執する世の男性と同じでしたから、そこを変えてくれたのは、妻の根底に流れる愛みたいなものを感じたからでしょうか…」

坂東 「相手の立場を考えてあげる、相手を伸ばしてあげたいということですよね」

堀江 「妻がそういうふうに僕を見てくれてたというのがあったので、私も妻の話を聞こうと耳を傾けたところはありますね。耳を傾ける自分に変わったといいますか。もともと、かたくななところはあったと思うのですが、『これだけは譲れない』なんていうのはちょっと違うんじゃないかなと。もっとこの人の話を聞いてみようという、そういう愛がきっかけで人が変わるということがあると思うんですけど」

坂東 「その通りですね」

堀江 「相手を理解して、愛を示すというように、徐々に変わっていったと思うんです。でも、そういうのは本能的に女性のほうが、どうしても強いのかなと思いますね。愛を示す、相手を理解するということに関しては…」

坂東 「父性的な愛と母性的な愛というのがありますよね。父性的な愛の場合は、高い目標を相手に示して、それに向けて必死にがんばって、それを達成すれば評価する。でも、できなければダメって切り捨てるところがあると思うんです」

堀江 「何らかの基準をつくるということですね?」

坂東 「でも、女性の場合は、『ダメね、しょうがないわね』といいながら、ちゃんと目標を達成できない人たちも応援してくれる、支えてくれる、励ましてがんばらせというところが違うのかなという気がします」

堀江 「たしかにそうですね」
 
坂東 「でも、その両方の愛が必要なんですよね。そういえば、『やり抜く力 GRIT(グリット)』(ダイヤモンド社)の中でも、父性的な高い目標、ちゃんとやれというような目標を提示するのと、一方で、温かい支援や励ましも必要で、そういう環境があれば、その中で、子どもたちはやり抜く力を養う、身につけることができるんだということが書かれているのが印象的でした」